境界の彼方:完結

□カーマイン
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「ちわっ」

「あら、来たの?珍しいわね」

「美月、開口一番素っ気ないな・・・今日は文芸部の日だったな」

文芸部の扉を開けるなり部長の美月からは毒舌が、秋人からは普通の対応が帰ってきた

「俺だってな一応文芸部員なんだから来るのは当たり前だろ?」

空士は野球部と文芸部を兼部している
メインは野球部だが時折こうして文芸部員として足を運んでいる

「ほらよ、渡されてた分読んだよ」

そう言って鞄から20冊の芝姫を出した

「それで?いいのあった?」

「無かった、お世辞にもいいとはいえなかった」

今度の芝姫は特別号らしく過去の作品から選考して傑作選を作るらしい

空士も文芸部員として選考作業を手伝っていたが野球部の練習と妖夢退治で忙しくなかなか読むに読めなかったのだ

「それは残念だったな、ちなみにまともなのはあった?」

「う〜んと・・・七人の仔山羊が狼を調理して母親と仲良く食べる話かな?」

「食べられるんじゃなくて?」

美月が当然のような疑問を言った

「そ、逆に狼を食べちゃうの」

「ちなみにどうやって狼を?」

「・・・それが・・・子供の狼を人質にして最後には子供の狼も・・・」

「えげつないな・・仔山羊」

「捕まえ方も雑だし、終わりには親山羊が山の独裁者になっちゃって・・・
話の展開があまりにもご都合主義だったから没にした」

「そうなんだ・・・山羊強いな・・・」

秋人はなかば呆れた顔になった

「その作者は山羊が好きなのかしらね?山羊が独裁者にしちゃう位なんだし。それとも狼が嫌いなのかしら?」

「別にどうでもいいじゃんそれより、ほらちゃんと買った来たぞそれと領収書」

昼休みに美月からメールが着た
内容は文芸部に来るついでにお菓子の買い出し、という内容だった商品まで細かく注文してきやがった

「ご苦労様」
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