短いの

□私の好きな君の好きな人
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「松田くん、好きな人いるらしいよ?」



見事玉砕だ。明後日にはもうバレンタインデーだというのに。私の一斉一代を懸けたバレンタインデーは、松田くんに好きな人がいるということによって見事に崩れ去った。松田くんにだけ、チョコ作ろうと思ってたのに。



『まじでかー…』

「うん、あの人懐こい笑顔でさらっと言ってきたわ」

『ありがとう、助かった』



松田くんとよく話してるあかりに聞いて正解だった、すぐに答えが返ってきた。そうか、松田くんには好きな人がいるのか。そしたら今年は友チョコだけで充分かな。少しは楽になりそうだ。チョコを作る分には楽になりそうだけど、気持ち的には全く楽にならない。どんどん気持ちが下がっていくだけ。松田くんの好きな人って誰だろう。きっと可愛い人か綺麗な人。勉強も出来て、運動も出来る。そんな完璧な人いるの?って感じだけど、きっとそれに近い人が好きなんだろう。残念ながら私は、その中には入らないんだけど。松田くん、人気だし片想いしてる子も少なくないからなぁ。きっと私が作ったチョコなんて。



* * *



『(危ないところだった…)』



次の日、帰り道数学の時間に宿題に出されていたプリントを机の中に忘れてきたことに気付いて、急いで取りに行った。私が学校に着いた頃には、ある程度の部活が終わっているところで、部活に参加していた生徒たちが帰るところだった。帰り道、1人になるのは少し寂しいと思い、部活の生徒に混じって帰ることにした。



「明日、松田のとこチョコすげーんだろーなー!」

「え、今年もなの?!」

「当たり前だろ! 無自覚の人気者さん!」



目立つ笑い声。大きなガタイ。間違いない、野球部だ。3人ほどしかいないが、その中に松田くんがいるのは間違いなかった。みんなが私に気付いてないことをいいことに、野球部の後ろに静かに着いていくことにした。



「そういや、松田お前好きなヤツいるって聞いたんだけど」



いきなりその話題?心臓に悪い。



「うん、いるよ」



ああそうか、ここでも松田くんはすぐに肯定しちゃうのか。



「それってもしかして、あかり?」

「あー、よく話すけど違う。あかりは友達止まり」

「えー、じゃあ誰だよ」

「うーん、陰ながら努力してて、人の話をよく聞いてくれて、他人の気持ちを理解してくれるけど実は少し鈍感なあかりとよく一緒にいる子、かな!」

「誰だよー!」

『(それって、)』



期待してもいいって、ことですか?





私が好きな君の好きな人
(前言撤回、チョコ、作ります)


▽▲▽▲▽▲
本当は切なめにするつもりが、期待感たっぷりな終わり方になってしまった。あれ。高2という裏設定。

title 魔女のおはなし
20150212


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