長いの

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『ん…今何時…?』



気付いたら、寝てしまっていたらしい。しかも、器用にも2人して休憩と言っていたあの体制のまま、手を繋いだまま。私が動いた振動で、有くんも起こしてしまったらしく、有くんはスマホで時間を確認していた。



「3時半…1時間くらい寝てたみたいやな、」

『気付いたら寝ちゃってた…って、あれ?』

「ん?」



ふと、有くんのスマホのホーム画面に出ている猫が視界に入った。



『有くん、ホーム画面の猫って、誰か飼ってる猫?』

「ん、ああ。実家で飼ってる猫なんやけど…」



そう言うと有くんは、私に実家で飼ってるという猫の写真を見せてくれる。白い毛並みが綺麗なメスのペルシャで、家族の中で有くんに1番になついている猫らしい。



『わあ、可愛い!』

「やろ?俺が実家帰るといつも擦り寄ってきて可愛いヤツだよ」



そう話す有くんの表情がとても優しくて、ずっと見ていたくなる。



『…ふふ、』

「? どうした?」

『ずいぶん優しい顔して話すんだね、大事にしてるの伝わってくる』



素直に思ったことを言っただけなのに、有くんの顔は徐々に徐々に真っ赤になっていく。珍しく、耳まで真っ赤っか。…あれ、もしかしていつもと立場が逆かも知れない。照れてる顔も、ちょっと可愛い…かも。



『有くん、可愛い』

「、コーヒー冷めたよな、淹れ直してくる」

『あ、ありがとう…』



あんなに照れる有くんは珍しくて、私まで恥ずかしくなってしまうじゃないか。困った顔、優しい顔、真剣な顔、さっきみたいな照れてる顔、一緒に過ごしていく中で、色々な表情を見てきて、もっともっと色んな顔を見てみたいと思う私がいる。そんな私はワガママ、なのかな?



『あっ…(うわ、間違って画面スライドさせちゃった…)』



すぐ画面を元に戻さないと、と焦って画面に視線を落とした。



『…な、んで…?私…?』



視線の先の写真には、笑顔でツーショットで写る、有くんと“私”がいた。





20141114


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