短いの

□友達の終わり
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「好き」



さあ今日も屋上に上がって2人きりで誰もいない屋上を2人占めするぞ!あはは!なんて、馬鹿みたいな会話をしながら人気のない静かな屋上へ向かう階段を登っている途中だった。すき。小さく、その声が聞こえた気がして、立ち止まる。人っ子ひとりいないんだから、聞き間違えるようなことなんてないはずだ。確かに、彼女は、すき。と。
近くに、自分のすぐ後ろを歩いていると思っていた彼女は、自分よりも数段下に立っていて、窓から入ってくる太陽の光に眩しそうに目を細めて、自分を見上げていた。



「すき?」
「……」
「何、え、どういうこと」
「……2回も言わせないでよ」
「言う相手、間違ってるんじゃないの?」
「間違ってないよ」



その瞳は、真っ直ぐで、真剣で、嘘偽りがないことを訴えていた。彼女の口調も、視線も、姿勢も、何もかもが本気であることを伝えている。パンとプリンとコーヒー牛乳を抱えた右腕が痛くなってきた。



「……ごめん」
「……何で謝るの?」
「いや、だって困ってそうに見えたから」
「びっくりしただけ」
「そ」



何で彼女はこんなにも淡々とあっさりしてるんだろう。この会話の中で階段を上がって、自分を追い抜かし、屋上に入るドアの前にまでたどり着いた。そしていつも通りに「ご飯、早く食べないと昼休み終わっちゃうよ」と言って笑いながらドアを開くんだ。ただ、今日の彼女は。



「好きだよ。だから、もしよかったら私と付き合ってください」



僕たちは今日、友達の終わりを迎えた。


友達の終わり





20160319


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