本棚3

□Breaking heart
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床下の物置に身を隠しながら、まだ幼いアリーは床を踏みしめるミシミシと近づいて来る足音に怯えていた
僅かな隙間から上を見上げると、母親が物置の真上に立ち両手を広げて行く手を阻んでいるのが見えた



ードゥンッ、ドゥンッ!!



銃声が聞こえたかと思うとドサッと何かが倒れた音が聞こえ、床の隙間から一滴の血が流れ落ちた
恐る恐るアリーがもう一度、上を見上げると生気が無くなった母の瞳と重なった



ー・・・お母さん?


赤い赤い夕日が差し込む夕刻
アリーの母は家族のために夕食を作っていた
母が作るシチューは大好物だった
向かいの席で酒を飲む義父が怖くて、アリーはずっと俯いていた
この男と暮らすようになってから、毎日が地獄のようだ
何度、神にこの男を地獄に連れて行って欲しいと願った事か・・・

だが、願いが天に届いたのか地獄から使者が訪れた
玄関の扉がノックされ、義父が扉を開け誰かと口論をしていた


ードゥンッ!!


突如、弾丸が義父の脳天を貫いた
母は慌ててアリーを床下の物置に隠し、その上に絨毯を敷いた
地獄からの使者はアリーの母と義父を殺害した
どんな顔をしているのか見てみようと、ゆっくり床下から頭だけを出すと宇宙服のような服を着た男がニヤリと笑い去って行った


壁に飛び散る鮮血
床の上に無惨に転がる二人の死体
何が起きたのかわからなく、アリーは物置から出ると、その場に力が抜けたように座り込んだ

頭の中で死にゆく母の最期の言葉がリフレインしていた


“今までごめんね・・・”
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