本棚3
□change!2
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目を開けると、ティアの顔を黒髪の青年が覗き込んでいた
青年のすぐ後ろで、数人の男女が空中ブランコの練習をしていた
ここは大きなテントの中のようで、ピエロの恰好をした人々が心配そうにこちらを見ていた
「全く・・だから無茶だって言っただろ?いきなり、空中ブランコを網無しで挑戦するだなんて言いだすから・・」
青年の手に掴まり、体を起こすとティアは薄着だという事に気づき反射的に前を隠した
「嫌だ・・こんな恰好で恥ずかしい」
ぴったりとしたこれ見よがしに胸元が開いたビスチェに、股下すれすれのミニスカートをどうして着ているのかわからないが、ドフラミンゴが見たら大喜びするに違いない
「・・恥ずかしい?いつも通りだろ?」
青年は首を傾げた
何だか首筋が寒いと思ったら、腰まで豊かに伸びた髪が肩までしかない事にティアは初めて気がついた
それに、体が小さくなった気がする・・・
体つきは大人びているが恐らく年齢は十代半ばだ
ペタペタと顔や体を触っているティアに、ピエロの恰好をした女性が近づいてきた
「・・アリー、髪が乱れてる」
渡された手鏡を見ると、見知らぬ少女が映っていた
「え!?だ・・・誰なの!?」
鏡を見て驚いているティアを、周りの仲間達はただ不思議そうに顔を見合わせていた
「・・アリー、頭でも打ったのか?」
「ドフィは・・?ドフィはどこ!?」
群衆の中から太ったタキシードを着た男が出てきて、ティアの頭をステッキでコツンと叩いた
「この不良娘!また、無茶な事をしおって・・・」
「ぁ・・ぁ・・私・・・」
「団長、アリーのやつ記憶喪失でも起こしたみたいだ」
「練習はここまでにして、休め!外で彼氏が待っているぞ?」
どんっと背中を押され、テントを出ると入口の所で長身の金髪の男がタバコを吸って待っていた
「・・アリー、また怒られたのか?」
男はどこかドフラミンゴと似ていて、ティアはその場に立ち尽くし男を凝視してしまった
「・・・・ドフィ」
うわ言のように呟いたその言葉に、長身の金髪の男はゲホゲホとタバコにむせた
「おいおい、おれとドフィの区別もできなくなったのか?」
面白おかしそうに笑っている男を尻目に、ティアは鳩が豆鉄砲をくらったかのように、ただ不思議そうに男を見つめていた
「さて、行くか!今日は二人でこの街で人気の喫茶店に行くって約束だったよな?」
男はタバコを靴で踏み消し先陣をきって歩き出そうとしたが突如、何も無い所で仰向けにすっ転んだ
ーーーズデンッ!!
転んだ拍子に、すぐ側の小さい着替え用のテントの骨組みにぶつかりテントが崩れ中で着替えをしていた女性達が悲鳴を上げて走り去って行った
「だ・・・大丈夫!?」
ティアが心配そうに見下ろすと、男は崩れ落ちたテントの下からムクリと起き上がり手をひらひらと振ってみせた
「・・アリー、起こしてくれ」
綱引きをするように、男の腕を引っ張り立ち上がるのを助けると服についた汚れ払い男は苦笑いを浮かべた
「また、ドジをやっちまった」
「これ・・・使う?」
いつものようにポケットからハンカチを取り出そうとしたが、ハンカチは見つからなかった
その代わりに胸元に挟んであったのは、ハートが描かれたオイルライターとタバコだった
「何だか今日は、随分と女らしいな」
「え・・いゃ・・その・・・」
「いつもだったら、おれが転ぶと笑うじゃねぇか」
しどろもどろな様子のティアの肩に腕を回し、男は抱き寄せた
「おれを意識して、女らしくなろうとしているのか?」
「ぁ・・ぁ・・ちょっと」
急に抱き寄せられ、男の顔が近距離でティアは体に力を入れガチガチに固くなり、男の顔を遠ざけた
「・・何でそんなに逃げる?」
「だ・・だめ、困るわ」
そっぽを向いて俯いているティアを男は首を傾げて見つめ、顎に手を当て考えた
「・・どうやら、本当に頭を打ったみてェだな」
「・・・・」
「まぁ、後でたっぷりおれを思い出させてやるからな?」
仲良く並んで歩き、二人は喫茶店の中へと入って行った