本棚3

□怒りと悲しみの行方
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しばらく湯に浸かり、アリーは深い溜め息をついた
湯から出ようと体を起こし、バスタブに足をかけた


「また助けられたわね・・」


片足を下ろした途端、足が痙攣を起こし体のバランスを崩し床に両手をついた


「この体の震えといい・・一体、どうしちまったんだ!?」
「・・時々こうなるの」
「体も傷だらけじゃねぇか!」
「こういうプレイが好きな男もいるってことよ・・」


アリーの体を起こし、ベッドに座らせるとコラソンは自身が着ていたハート柄のシャツを脱ぎ彼女に着せた


「お前のは濡れていて着れないから、これを着ろ」


コラソンのブカブカのシャツを身に纏い、アリーは思わず笑ってしまった
シャツには、コラソンの匂いが染みついている
彼に抱きしめられている気分だ


外の天候は荒れる一方で、横殴りの雨と共に雷鳴が轟きアリーの肩が、びくんっと跳ねるとコラソンは隣に腰かけ震える体を抱きしめた


「おれと会わない間に何があったんだ・・・?」
「・・何でそんな事を聞くわけ?」
「・・・それは」


若干、頬を赤らめコラソンがパッと顔を背けるとアリーは、ニヤリと笑った


「・・信じられない。まだ、あたしの事を想っていてくれたんだ」
「・・・・・」
「あたしには・・どうやら、あんたしかいないみたい」


アリーの瞳から、涙が零れ落ちコラソンのシャツを濡らした


「・・あんたと別れてから、酒屋の優しいオニーサンと付き合ったんだけど、すぐにあたしに嫌気が差したみたい。・・‟もう二度と会いに来ないでくれ”って言われたわ」
「お前のどこに嫌気が差したんだ・・?」



コラソンの厚い胸板を指でくるくるとなぞり、ちらっと彼の顔を見上げ面白おかしそうにアリーは笑いながら答えた


「・・君と一緒だと虎を飼っているみたいだ。虎には餌が必要だろ?僕では・・君を満足させてあげられないって言われたわ」



性の楽しみを開花させてしまったアリーにとって、一人の平凡な男では満たされなかったのだろう
思えばコラソンと一夜を共に過ごす時、夜が明けるまで三回は求めたのだから余程、体力のある男性でなければついていけないのだ
コラソンは、話を聞きフフフッと笑った


「・・今更、都合のいい女だと思うだろうけど、ロシー・・あんたと別れたのは間違いだったわ」
「・・おれの一族はお前から家族を奪った。お前が体を売る生活をしているのは、おれたち天竜人のせいだ。・・・だから、おれがお前の家族になる!」
「ロシー・・・」
「・・それでも、おれが憎いのなら殺せばいい。それでお前の気が晴れるのなら」


アリーの頭を撫でるコラソンの手は、とても温かかった
嬉しいような、悲しいような気持ちが一気にこみ上げアリーはコラソンの胸を力任せに叩いた


「殺してやりたい・・殺してやりたいわよ!」


黙ってアリーの攻撃を受け、コラソンはアリーに口づけた
涙でグシャグシャになった顔をコラソンの胸に押しつけ、その大きな背中に腕を回しきつく抱きしめた



「殺してやりたいくらい・・・あんたが好きよ!!」
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