本棚3

□知りたい!ちびちびロー君2
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「ーーおい!大丈夫か・・・!?」



朝食を食べ終え、シャコシャコと鏡の前で歯磨きをしていたアリーは声のする方を振り向いた
声の主は、自身の身長よりずっと低い位置に居て鋭い目つきでアリーを見上げていた



「あら、ローちゃん。おはよ〜〜、どったの?」



聴診器と白衣を身に纏い、医者のような恰好をしたローを見てアリーは目を丸くさせた



「お前・・血が出ているぞ!?」



扉が開けっ放しのアリーの部屋を指差し、まだ幼いローはパタパタと走って部屋の中へ入るとシーツの上をバンバンと叩いた



「ほら、見ろ!こんなに出血しているぞ!お前きっと病気なんだ」


ローの後を追いかけ、寝ぼけ眼で部屋の中を覗き見てアリーは気怠そうに答えた



「あーーー、ソレね。別に病気って訳じゃないから」


手をブンブンと横に振るアリーを余所に、ローは分厚い本を何とか持ち上げパラパラと本をめくっていた



「おかしいな・・・どこかに書いてあったぞ」



ローがページをめくっている中、アリーは大きな欠伸をして脳に酸素を送りこんだ
ここは、街の一角にある小さな宿屋でローの病気を治すためにあちこちの病院を回っているコラソンとローは、この街でアリーと再会し一晩を過ごした


コラソンとアリーが夜な夜な二人で、ベッドの中に入りもぞもぞと何かしているのでローは二人に興味津々だ



「あっ、スミマセン。シーツ汚しちゃったから代えておいて」
「・・・かしこまりました」



廊下を歩く年配の女性スタッフにそう告げ、アリーは歯磨きを終えタバコに火をつけた



「なになに?あんた、お医者さんごっこでもやってんの?」
「ごっこじゃねぇ!おれは将来、医者になるんだ!」
「じゃあ、あたしが何の病気か診察してよ♪」



ニヤニヤと笑っているアリーに苛立ちを感じ、ローは医学の本を何冊もせっせとテーブルの上に運びページをめくった



「くそ!バカにしやがって・・・」
「どうした?ロー、朝からお勉強か?」



背後からコラソンが近づいて来て、ローの頭をポンポンと撫でた



「コラさん!アリーは病気なんだ!」
「・・ん?そうなのか?」
「シーツにべっとり血が・・・」



コラソンがアリーの方へ体を向けると、アリーはペロッと舌を出しウィンクした



「ごっめーーん、ロシー。アレがきちゃった」
「ん?あ・・あぁ、アレか・・」



二人の顔を交互に見つめ、ローは力任せに本をテーブルの上に乗せた



「何だよ!二人にしかわからない会話するなよ!!」
「わかった、わかった、教えてあげるからそんなに怒らなーーーい」



頬をプニプニと突っつかれ、反射的に手を払いローは腕組みをしてアリーに背を向けた



「ローちゃん、あたしのあの出血は病気ではないの。寧ろ健康だって証拠♪」
「・・・何だソレ」
「生理だ、ロー。聞いた事あるだろ?」



腕組みをして首を傾げているローを見て、アリーは高らかに笑った



「アハハッ、この子ったら真剣に考えてる」
「婦人科のページを読んでみろ。多分、詳しく載っているぞ」



コラソンがページをめくるのを手伝ってやると、ローは食いつくようにページを読んだ



「・・本当だ。書いてある」
「すごーーい、この本・・詳しく絵まで描いてある」



ひょいっと、アリーがローの手から本を取り上げるとローはジャンプをして本を取り戻そうとした


「返せよ!おれのだ!!」
「ローの両親は医者だったからな・・」


ようやく本を取り戻し、ローは再び婦人科のページをめくり興味深そうに読んでいた



「こら、ローちゃん!そのページばかり読まないの!」
「でも、二人は毎晩コレをしているのに何で妊娠しないんだ?何で生理がくるんだ?」



ローの言葉にコラソンとアリーは顔を見合わせ、凍りついた



ーーーーそうきたか(;'∀')



返答に困っている様子のコラソンの腕を揺さぶり、ローは本を指差しながら聞いた



「なぁ、コラさん!どうしてなんだ??」
「あーーー・・えっと・・・」
「避妊しているからよ!」



ぎょっとコラソンはアリーの方を振り向いたが、彼女はドヤ顔でしれっとした様子でそう答えた


「ヒニン・・?ヒニンってなんだ?」
「赤ちゃんができないようにするのよ。例えば〜〜〜・・何人も何人もラミちゃんが生まれちゃっら困るでしょ〜?」



ラミという言葉を聞き、ローは悲しそうに俯いた


「・・妹は死んだ。もう二度と会えない」
「妊娠するってことは、ローちゃんに妹か弟ができるって事なのよ。そうならないようにあたし達は避妊をしているってわけ」



ナイスだ!っとコラソンはアリーの対応に
親指を立て褒め称えたが、それは逆効果だった
俯いていたローは、ふいに明るさを取り戻し目を輝かせて二人を見上げた


「おれ・・妹か弟が欲しい!妊娠してくれよ!」
「いや・・ロー、ちょっと待て・・・」
「一人ぼっちは嫌だから10人は兄弟が欲しいな・・どんどん妊娠してくれよ!そしたら、おれが・・・」


深い溜め息をつき、アリーはローの頭の上に分厚い本の角をぶつけた



「痛っ!何すんだよ!!」
「おバカ!10人も妊娠なんてできないわよ!」
「・・ロー、寂しいのはわかるがムチャクチャだぞ」



苦笑いを浮かべている、コラソンの前でローは黙りこみ残念そうに目線を下に向けていた
コラソンとアリーは顔を見合わせ、ローの頭を優しく撫でた



「まぁ、あたしとロシーに子供ができたらあんたがお兄ちゃんになってよ」
「女だったら、ラミって名づけるからな?」



二人の言葉を聞き、ローは満足そうに大きく頷いた
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