ネコミミフェイク
□表の顔はイイ子ちゃん
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緊張と期待が織り混ざっている独特の雰囲気。
眠気を誘う程よい暖かさとのどかなヴァイオリンの音色。
硝子張りの壁から差し込む暖かな太陽の光。
硬過ぎるも柔過ぎるもなく、いい硬度に、とても滑らかな布地の椅子。
足下に敷き詰められているのは、軽く弾力のある明るい茶色の絨毯。
正面の壇上で笑顔で話し続けるハゲ。
私は、正面から少し視線を外して、高価そうな掛け時計を見る。
事前に教えらているプログラムでは、そろそろだ。
「新入生代表、藤更律葉」
マイク越しに自分の名前を呼ばれた。
「はいっ」
高すぎず、低すぎず、ハキハキとした声と共に立ち上がる。
その瞬間、その場にいる全員の視線が私に向けられる。
事前に教えられているように列を抜け、壇上へと向かう。
うわっ。BGMってCDじゃなかったんだ、マジでヴァイオリン弾いてるよ。流石、金持ち校。
視線を浴びている事を痛感しながら、年のいったじじばば、じゃなくて御来賓の方々に一礼する。
1、2、3と心の中で数え頭を上げ、緊張している様な笑みを作り進む。
階段を丁寧に登り学園長(ハゲ)に一礼する。
制服の内ポケットから紙を出し広げる。
学園長がわたしにマイクを向けてくれたが... ... 近ぇよ。
半歩後ずさりして、女の子らしくスカートの裾を少し引っ張ってから、息を吸って読み上げる。