ディアーユー

□可愛い?
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「お帰りなさいませイルミ様」
「うん」
「お食事になさいますか?」
「あー、なんか食べたいかな」

朝は見なかったナマエが、帰ると何事もなかったかのように姿を現した。
帰りが遅めだったせいか、もう他の人達は一足先に食事を済ませたようだった。
今日は少し時間かかっちゃったかな。

「今日の朝は見なかったけど、どうしたの」
「別件で」
「別件?」
「ええ、ミルキ様と」

ナマエがイルミの前にスープを出しながら言った。するとイルミはミルキという名前に反応して、ほぼ能面みたいな顔に少し変化が表れた。

「ミルがどうしたの」
「昨日の夜から、ミルキ様とコスプレコンテストの案を練っていまして」

カチャーン。イルミはスプーンでスープを掬おうとしたが、ナマエの発言にスプーンを落としてしまって、スープが飛び散った。

「ん?コスプレ?」
「イルミ様、スープがっ」

ナマエは慌てて飛び散ったスープを拭き始める。

「コスプレって、誰が?ミルがするの?」
「私ですよ」
「え?ナマエが?」
「はいそうです」

はいそうですって......。
なんでこの子は頼まれたらなんでもしちゃうのかな。

「嫌なら断ればいいんだよ、お前はメイドなんだからね」
「嫌じゃないですよ」
「嫌じゃないの?へえー、驚きだ」
「楽しそうですし、有料なので」
「...金の問題?お前もだいぶゾル家らしいギブアンドテイクを覚えたね」
「イルミ様のおかげで徹夜もへっちゃらになりました」

オレはかまわないけど、世間一般に言えば喜ぶことじゃないよ、それ。

「で、コスプレするの?」
「していいですか?」

オレに許可とる?
ダメだよ。絶対にね。

「ダメ」
「ですよね、キルア様にも止められたので、諦めました」
「キルが?」
「露出が多いとかどうとかで」

ナマエは曇り一つないグラスに水を注ぎながら言った。

「あのさ......オレは前も言ったよね」
「はい?」
「はい?じゃないよ。ナマエみたいな可愛い子が好きな人もいるんだからうかつなことしちゃダメだって」
「............イルミ様......」
「何?文句でもあるの?」
「いえ......わた、私って...可愛いですか?」
「は?」
「だってイルミ様、ナマエみたいな可愛い子っておっしゃいましたよ?」
「え」
「え?」

え?本当に?言った?え、言った?...言った......言ったんだ...オレ。
.........あーあ、口に出しちゃったよ。
そんなに、嬉しそうな顔しないでね。ムカつくから針投げるよ。

「ダメです、イルミ様」

イルミが手に持った針を見て、ナマエはイルミの手を握る。最近では避けるのもお手の物だが先手必勝という言葉もある。

「......」
「痛いのは嫌ですよ」
「最近は反応が早いね」
「イルミ様のおかげです」

ナマエは手を握りながらオレに微笑みかけた。
何か最近、可愛くなったね。
これは口には出してあげないけど。

「手」
「あ、申し訳ございません」
「いいけど...」
「イルミ様が針を出すから、つい」
「あ、そうだ、誰かれ構わずこうやって手は握っちゃダメだよ」
「?」
「男は危ないからね、特にあのプリンヤローはダメだよ」
「プリンの人と会ったことあるんですか?」
「......ない」

嘘。本当はある。

「そうだ、プリンの人からメールが来たんですけど」
「え、どうして?」
「だって、向こうも私のアドレス知ってますから」
「ふーん、ならその携帯はそろそろ替え時かな」
「返信はしてないので大丈夫です」
「大丈夫じゃないよ、携帯替えないならせめてアドレスくらい変えれば?」
「うーん、まだ何もないので」
「何かあってからじゃ遅いの」

バカじゃないの。何かあってから変えたって意味ないでしょ。後の祭りって知ってる?

「イルミ様はお優しいですね」

ナマエは続けて最初とイメージ変わりましたといらない一言を付け足した。

「優しい?オレが?」
「だって、私の身を案じてくださいますし」
「あーそうだね、だってお前が殺されそうになったらオレが助けなきゃいけないんでしょ?」

めんどくさいよ。有料だけど、どうせ金ないんだろうから。タダ働きは嫌でしょ。
...そんなに笑うな。
...全くナマエみたいな子にはなかなか出会えないよね。ほんっと。









もう、迷子...。

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