ダイヤのA

□花見
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ねぇ先輩。
そろそろ僕の気持ちに気付いてよ。



「名無しさん先輩」

「ん?」

「今日の放課後あいてます?」

「うん、用事はないよ」

「じゃあホームルーム終わったら靴箱で」

「あいよー」



放課後、
急いで靴箱に向かうと先輩の姿があった。
僕を見つけると小さく手を振ってくれた。
嬉しくてついつい口元が緩む。



「ごめんなさい、待ちました?」

「ううん、今来たとこ」

「よかった」

「部活は?」

「今日は休みなんです。なので…名無しさん先輩と行きたい所があって…」

「なになに?放課後デートってやつ?」



デートという言葉で顔が一気に熱くなる。
いっつもそういうこと言って僕が照れるのを見て面白がるんだから。



「可愛いなー!」



なんて言いながら僕の頭をなでなでする先輩。
ムッと膨れっ面にになると余計に先輩は喜んでなでなで。



「もー!行きますよ!」

「え、ちょっ」



頭を撫でてた手を掴んで歩き出すと先輩は少しよろけた。
特に話さずずんずんと進む僕の後を先輩が軽く引っ張られる形でついてくる。



「どこ行くの?」

「ついたらわかります」

「春市、怒ってるの?」

「怒ってません」

「えー絶対怒ってるー」

「怒ってません!」



移動中ずっと怒ってる?どこ行くの?と繰り返す先輩を無視して歩く。
怒ってるのは少しだけ当たってるけど、手を繋いでるのが恥ずかしくて何を話していいかわからなくて黙ってるだけ。
でもそんなの恥ずかしくて先輩に言えない。



「名無しさん先輩、ここからは目を閉じてください」

「え?なんで?」

「いいから!」



目を閉じてるのを確認しながら手を引いて誘導する。



「開けていいですよ」

「…おー!!!」



目の前に広がる満開の桜に大喜びする先輩。
その笑顔を見れるだけで幸せだよ。



「すっごーい!綺麗!綺麗だね!」



はしゃいで走り回る先輩が段々犬に見えてきた。
駆け寄ってくる先輩。



「ありがと!」

「喜んでもらえたんならよかったです。そうだ、もう一度目を閉じてください」

「え、今度は何?」



目を閉じてワクワクしてる先輩の唇に軽く唇をくっつける。
ずっと望んでいた感触はふわっと柔らかいものだった。
3秒ほどその感触を楽しんで離れると、先輩は真っ赤な顔でポカーンとしていた。



「名無しさん先輩、顔真っ赤です…」

「ははは春市だって…」

「真っ赤な先輩も可愛いです…」

「そんなことないよ…」

「…そろそろ帰ります?」

「そうだね…あ!待って!」



歩き出そうとしたら手を掴まれ引き止められた。
振り返ると先輩は俯いていた。



「あのね?その…もう一回…して?」



もう、可愛すぎ。
思わず先輩を抱きしめ、さっきのキスより強く唇を押し当てた。

これはもう僕の気持ちは伝わった。
先輩も同じ気持ちってことでいいんだよね?
恥ずかしくて確認できないなんてまだまだだなぁ…。

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