読み物
□待ち侘びて 水尾夢 甘
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「あー?葵を江戸に寄越せだぁ?」
「え?」
葵も驚いて水尾の手の中の文を覗き込む。
そこには、こんな事が書かれていた。
『葵へ
久しぶりだな、大事ないか?
お前が居なくなってからの大奥は、以前よりも静かになったと専らの噂だ。
皆、何故かはわからないが張り合いがないと呟いている。
そんな話を聞いていると、私もお前に会いたくなってな。
久しぶりに、二人で話をしたい。
江戸に遊びにおいで。待っている。
家光』
文を読み終えた葵は、嬉しそうに目を輝かせた。
「嬉しいな、家光様が会いたいって言ってくださるなんて」
顔を綻ばせていると、水尾が不機嫌そうに煙管を吹かせた。
「問題はそこじゃねぇ。その後だ」
「後?」