読み物

□待ち侘びて  水尾夢 甘
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少し前から水尾の片腕に抱き締められたままの葵は、恥ずかしそうに身を縮こまらせた。


「そんな事言って、離すとまた寂しそうにしやがるじゃねぇか、お前は」
「ぅ……」


見透かしたように目を細め、水尾は葵の額に唇を軽く触れさせる。


「誤魔化そうとしてんじゃねぇよ、この可愛い天邪鬼が」



葵はそれ以上何も言えなくなり、真っ赤な顔を一度反らしてから、思い出したように振り返った。


「…そ、それで、家光様からは何と?」
「嗚呼、そうだったな」


葵を可愛がろうとしてすっかり忘れていたぜ。


乱雑に文を開いて、少し短めの文章に目を通す。
すると、読み終わったらしい水尾の眉が思いっきりひそめられた。

 
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