読み物
□待ち侘びて 水尾夢 甘
4ページ/19ページ
少し前から水尾の片腕に抱き締められたままの葵は、恥ずかしそうに身を縮こまらせた。
「そんな事言って、離すとまた寂しそうにしやがるじゃねぇか、お前は」
「ぅ……」
見透かしたように目を細め、水尾は葵の額に唇を軽く触れさせる。
「誤魔化そうとしてんじゃねぇよ、この可愛い天邪鬼が」
葵はそれ以上何も言えなくなり、真っ赤な顔を一度反らしてから、思い出したように振り返った。
「…そ、それで、家光様からは何と?」
「嗚呼、そうだったな」
葵を可愛がろうとしてすっかり忘れていたぜ。
乱雑に文を開いて、少し短めの文章に目を通す。
すると、読み終わったらしい水尾の眉が思いっきりひそめられた。