読み物
□お兄様がいっぱい? 麻兎夢 甘
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「…気付いたら小さくなってたってわけ?」
「…うん」
麻兎が呆れたように大きく息をついた。
「あのさ、アンタただでさえ命を狙われやすい「上様」の影武者なんてしてるんだから、そんな怪しいものが出たら飲まないのが鉄則だろ?」
「…ご、ごめんなさい…」
葵は申し訳なさそうに頭を下げる。
とは言え、自分の用意したお茶だと信じて喜んでいた様を思い浮かべると、あまり強くも言えない麻兎だった。
「…ま、いいよ。即効性があるって事は、戻りが早い可能性もあるからな。とりあえず春日局様に事情を話しておくか」
「うん…!」
葵がパッと笑顔を向ける。
そんな顔しちゃダメだろ。
まさか子どもの姿の葵にまでその笑顔に心を揺さぶられようとは思っていなかった麻兎は、内心で溜め息を漏らしながら葵に向かって両腕を伸ばす。
「んじゃ、そうと決まれば…」
小さくなった葵の身体をいつものように抱えあげる。
「あ、麻兎っ!?」
「こっちの方が早いだろ。さっさと行くぞ」
「…うん」
納得いかなさげながらも葵が服にしっかりとしがみついたのを確認してから、麻兎は足早に葵の間を出た。
そして、時は更に半刻後に移る。