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□気まぐれが、むしろ
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「あたし、コンタクトにしようかなーと思うんだけど、大輝どう思う?」
「あー、いいんじゃねぇ?キスする時とか、邪魔くせぇし。」
「あ、そう。」
あたしは小学5年生の時からメガネを掛けている。
メガネは、一見真面目に見えるから、皆が注意されている化粧やらピアスやらを、あたしがしても注意されない点で、ものすごく便利。
第一印象で何もかも決めつける教師を欺くのにもってこいなアイテムは、眼鏡以上に無い。
しかしその半面、雨の時にレンズに水滴が付いたり、寒い日に外から室内に入ると曇ったり、授業中寝るときに跡がついたりetc……と、不便も多かった。
そうして考えた結果、不便の改善を優先した。
「お前がナイスメガネ女だったから、俺は色々助かったんだけどなー……「名無しさんと一緒にいる」って言えば、色々面倒なさつきも今吉さんも、監督も、一発で安心したのによ。」
「まぁ、あたしの真面目イメージはもう頭に刷り込まれてるだろうからその辺は大丈夫。」
「…お前、ずる賢い女だな」
「そう?」
「そういうところがまぁ、好きなんだけどな。」
そう言ったのと同時に授業開始5分前の予鈴が鳴り、横で仰向けになって寝っころがっていた大輝が腕をこちらに伸ばしてきたので、あたしはそれを掴んでグッと彼の上半身を起こそうとするが、ビクともしない。
「自分で力入れてよ。アンタの巨体をあたしの腕力だけで起こせると思ってんの?」
「じゃあ、お前が隣で寝ればいいだろ。」
「今チャイム鳴りましたけど。」
「ダリィ〜……」
そう言いつつも、大輝は自分で上半身を起こして、欠伸をした。
「ほら、立て。」
「その前にやることがあんだろーが。」
あたしは強い力で引っ張られて、唇を押し付けられた。
その時、コツンとメガネが大輝の鼻骨に当たった。
「やっぱり邪魔くせぇなそれ……外せ。」
あたしはスッとメガネを外して、ジッと彼の力強い目を見つめた。
5秒ほど見つめるとすぐに、彼が目を反らした。
「…………やっぱり、掛けとけ。」
「はぁ?どっちだよ……外せだの掛けとけだの……」
「そんな可愛い顔は、他の男には見せられねぇ。」
「………っ!?」
普段言わない彼のベタな台詞に、驚き戸惑った。
「んだよ、悪いか?彼氏が彼女の可愛いツラを他の男に見せたくないっつーのは……」
「いや……全然!むしろ……」
「むしろ?」
「やっぱり、言わないわ。言ったら大輝調子に乗るから。」
「乗んねーよ!」
いつも彼のわがままで気まぐれなところに困らせられてばかりだけど、今の気まぐれは悪くなかったかなと思った。いや、むしろちょっと萌えた。