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□代わり
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「あのね……カズにね……言わなきゃいけないことがあるの……。」




今日は、バレンタイン。




勿論、俺は昨日から彼女である名無しさんからチョコレートを貰うのを楽しみにしてて夜も眠れませんでしたっつー状態で、今日は学校に来た。




まだかまだかと袋を持って俺の教室にひょっこり顔を出して、笑顔で手招きする名無しさんをずっと待っていたわけだが………





教室に来た名無しさんの顔は、ひどく沈んでいた。




どうしたんだろう?と思って名無しさんの元へ行くと、「話があるからちょっと来て」と言われて腕を引っ張られた。




そして今、「言わなきゃいけないことがあるの…」………。




まさか、こんなハッピーデイに、「わ」から始まる最悪の言葉とか……ないよな………




「わ………」




いやいや、ちょっと待てよ。いきなりはキツ………




「私、昨日忙しくて、チョコ作ってこれなかったの……ごめんね。」



「へ?」



「皆が渡してる中でこんなことを言うのは言いづらくて…………ちょっと来てもらったの。」



「よ、よかったぁ………」



「え?何が?」



「あ、いや、何でも………いや、うん………」



「?」



「あんまり名無しさんが暗い顔して「話があるからちょっと来て」っつーから……俺てっきり別れの言葉を言われるのかと………」




そう言うと、名無しさんは驚いて目を見開いて、徐々にその目に涙が溜まっていった。




「えっ……ちょっ……」



「そんなの、言うわけないじゃん……」



「………そうだよな。ごめんな………」




自分の勘違いが途端に申し訳なくなって、鼻をすすってしゃくりあげる名無しさんを抱き寄せた。




「チョコ、ホワイトデーでもいい?」



「ん〜……いいけど〜……」


「けど?」



「俺、めっちゃ楽しみにしてたからさ、なんか代わりでもいいから頂戴よ。」



「えっ………」



「簡単なものでいいのよ?例えばね〜……チューとか………」



「バカ。」



「お願いっ!!」



「……特別ね。」




そう言って名無しさんはチョコの代わりに、甘いキスを1つくれた。




「あー、もしかしたらチョコより嬉しいかもしんねーわ。」



「じゃあ、ホワイトデーあげないから。」



「お、その分チューしてくれると…」



「やっぱりあげる。」



「ちぇっ……」




名無しさんがホワイトデーにチョコをくれるなら、俺は忘れたフリをしてクッキーの代わりにキスを返してやろうかな。なんちて。
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