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□彼女より、彼女
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「玲央って、いいよね。」



「……何が?」



「だって、あたしより美人だし、女子力高いじゃん。」




あたしの彼氏である玲央は………




サラサラの黒髪、長い睫毛、何もしなくても潤った唇、整った顔立ち……女であるあたしが羨ましくなるほどだった。




それに、あたしがバレンタインに手作りのチョコレートをあげると、それより何百倍もおいしい手作りのクッキーがホワイトデーに返ってきた。




そんな彼氏が大好きではあったのだけど………。




「あらあら、いきなりどうしたの……?」



「…………」




そんな玲央に比べてあたしは……




髪は剛毛で癖毛、睫毛は密度はあるけど短いし、乾燥肌で、唇も乾燥しがちでリップクリームが手放せない。




男兄弟で育ってきたため性格も男っぽくて、癖毛で髪の毛が伸ばせなくてずっとショートヘアーだから、見た目もちょっと男っぽい。




女子からラブレターを貰ったこともあるし、高校に入った最初の方は男と間違えられて告白されたこともある。




「あたしも、玲央みたいに女らしくなりたいなぁ……」



「どうして?今のままでも十分可愛いわよ?」



「いいよいいよそんなお世辞は……」



「本当よ?美白だし、綺麗な顔してるし……」



「でも、髪短いし。」



「オシャレよ?」



「……うーん……」




玲央の誉め言葉も素直に受けとれず、しかめ面をして俯いていると、ぐっと指先で顎をあげられ、長い睫毛を携えた目でじっと見つめられた。




「大体アンタ、女らしくなったところでどうするつもり?まさか、モテたいの?」



「いやいや、そんなわけは……」



「じゃ、いいじゃない。名無しさんが可愛いのなんて私が知っていれば十分。」



「そうなの?」



「そうなの。はい!この話は終わり!ほら、早くしないとバス来ちゃう。」




そう言って、玲央はくるりと前を向いてスタスタと歩いていってしまった。





………前を歩く玲央の、風になびいているサラサラな黒髪が、やっぱり羨ましいなと思いながら、その背中を追いかけた。
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