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□20分と、あと少し
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昼休み、毎日屋上で本を読んでいる彼氏に会いに行くが、いつも本に夢中で全然構ってくれない。
「ちー、構って。」
「ちーって呼ぶな。」
「えー……何でさ。」
彼と付き合い始めてもうすぐ2年になる。
「ちー」というのは付き合い始めにあたしが付けた、あたしだけのあだ名だった。
最初は喜んでたのに、付き合って時間が経つのにつれて「やっぱり恥ずかしい」と言って嫌がるようになった。
「黛くん、構って下さい。」
「暑いから、抱きつくな。」
「ひどい〜……」
とは言いつつも、あたしは本を読んでいる彼の横顔が、真剣な目が大好きだから、別に構ってくれなくてもいい。何となく、彼女っぽいことを言ってみてるだけ。
「あー、だから離れろってば。」
「それはやだ〜」
「ったく……」
彼は開いているページにしおりを挟んで、パタリと本を閉じた。
「大体、構うって何すればいいんだよ。学校で……ましてや昼休みに一線踏み越える訳にもいかねーし……」
「うーわ、ちー変態。」
そう悪態をつくと、スカートをひらりとめくられた。
「こんなにスカート短くしてるやつに言われたくないな。」
「はぁ?別に普通だし。」
「こっちがはぁ?だよ。どこが普通だ。こんなの穿いて無いのと一緒だろ。」
確かに、あたしのスカートは太股を15cmくらいしか隠しておらず、よくよく考えてみれば普通とは言えなかった。
「……やっぱり、前言撤回。」
「え?」
「一線踏み越えるのも、悪くないかもしれん。」
「えっ……ちょっ……」
「恨むなら自分のスカートと太腿を恨めよ。」
そしてあたしが何かを言い返すより先に、横顔はすでにこちらを向いて、あたしの顔に近づいて、やがて唇と唇が触れあった。
昼休み終了まで、あと20分と少し。