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□灰色ノスタルジア
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「なあロゼ」



大好きな主様の問いかけに、何でしょう?と答える。



…なんだろう、今日はなんだか、いつもより寂しそうだ。



主様が、再び口を開く。



「俺さ、もう、ジム戦挑むの、やめようと思うんだ」



ふ、と笑った主様の表情は、今まででいちばん切なかった。



…どうして?



どうして、ですか。



誰よりもバトルが好きだった主様。



なのに、やめるなんて。



ポケモントレーナーの醍醐味ともいえる、ジム戦を。



どうして、どうして、どうしてっ!



いくら叫んでも、わたしの口からこぼれるのは情けない鳴き声ばかり。



主様には、伝わらない言葉。



「もう、つかれちゃったんだ」



…つかれた?



「俺たち、もう何年もジム戦やってるだろ?なのに、勝てたことなんて一度もない。最初のジムでさえもだ」



でも……それでもわたしは………!



「なあロゼ、」



負けっぱなしで、楽しいか?



主様の言葉が、どくりと胸を突き刺した。



「俺といて、楽しかったか?」



そんなの、あたりまえじゃないですか!



声が嗄れるほど叫んでも、やっぱり言葉は伝わらない。



今ほど種族の違いを恨むことは、きっと未来永劫ないだろう。



「……ろぜ、」



いやだ、いやですあるじさま…っ



そんなかなしい声で、表情で、わたしのなまえをよばないで…!




「おわかれ、しよっか」






わたしのせかいが、いろをなくした。
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