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□むかしむかしの空飛ぶ人魚
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ぴんくいろのにんぎょは、あおにあこがれていました。
うみのふかいあおではなく、もっととうめいで、すんだそらのあおに。
にんぎょは、むかしじぶんはとりだったといいます。
「むかしはよかったわ。あのすてきなあおいそらを、じぶんのからだを、はねをつかってとんでいたんだもの。あれいじょうにしあわせでたのしいことはないわ!」
そんなことをいっては、くもひとつないそらをみあげるのです。
「あのまっかなたいようのせいでわたしのはねはもえて、やけこげてしまった。ああ、たいようがにくい!たいようさえなければ、わたしはまだあのひろくてしあわせなそらをとんでいることができたのに」
にんぎょは、かおをくやしげにゆがめてそういいました。
「でも、もういいの。そのおかげで、いまはしたから、どこまでもつながっている、きれいなあおをみることができるのだから」
にんぎょは、ほほえんでいました。
つぎのひ、にんぎょはあわになってきえました。
ぴんくいろのにんぎょは、ふかいあおにとけて、ただよって、まっかなたいようによってじょうはつし、そらへとむかっていきました。
とうめいで、すんでいて、こうふくで、ばかなにんぎょの、あおいはなしでした。