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□うそもほんとうもぜんぶまとめてはいいろにぬりつぶしてあげるから
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「カノ?」



「あ、セトー?」



リビングで意味もなく雑誌をめくっていると、ききなれた声がした。



「珍しいっすね、カノがこんな時間に起きてるなんて」



「やー、なんか目ぇ覚めちゃって。お腹空いたのかな?」



けらけらと笑いながら言う僕。



セトが驚くのも無理はない。



だって今はまだ夜の3時だからだ。



「セトの方こそどうしたのさ」



「新聞配達のバイトっす」



「あー、なるほど。朝早くからご苦労だねえ」



「はは、カノもやってみるっすか?」



「遠慮しとくよー。僕はお家でのんびりしてるのが1番だから」



「またそんなこと言ってー」



キドに怒られるっすよ?とセトが屈託なく笑う。



「いーじゃん。まだこんな時間だし、誰も起きてこないよ」



「それもそうっすね」



じゃ、いってくるっす!とセトが玄関へ向かう。



「ねえセト」



その背中を見送る僕は、いってらっしゃいのかわりの声をかける。



「? なんすか?」



無邪気に首を傾ける彼。





「ぜんぶ、みてるんだよ」





「…………え」



「セトはさ、本当はこれから、どこに行くのかな?」



「…だから、新聞配達の「それは違うよね」…っ」



「言ったでしょ?僕は全部みてるし、知ってるんだ」




本当は、どこに行くのかな?




本心からの、偽りのない本当の、嘘みたいに本当な笑みをはりつけた顔で嗤う。



「………カノ、」



「なあに?」



「…いってくるっす」



ああ、君はやっぱりそうやって、僕に背を向けていってしまうんだ。



偽物の行き先を告げて。






(ぼくのしらないところに、
てのとどかないところにいかないで)




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伸ばした手が届かないってつらい。

なんでこれカノキドでやらなかったのかっていう後悔。

ちなみに実際のセトさんの行き先は傷ついたセキセイインコのとこです。優しい。

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