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□はらぺこもすきーと
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「ねえ真ちゃん」



「なんだ」



「吸血鬼ってさ、なんで血ぃ吸うのかね」



「…………は?」



「吸血鬼って「そういうこっちゃないのだよ」えー?」



「だから、なぜいきなりそういう話になるのだということだ」



「…あー、なんでだろね?」



じゃあ、もっと身近なものに例えようか



焦げ茶色と橙色を足して2で割ったような色の髪をくるくると指に巻きつけながら、彼女はそういった。



「蚊ってさ、なんで血ぃ吸うのかね」



「それは栄養にするためだろう」



「栄養?」



「自身が生きるための糧」



「じゃあさ、なんであえて血を選んだの」



「花の蜜なんかよりも、よっぽど手軽だからじゃないのか」



「そっかー」



じゃあそれを平然とやってのける雄の蚊は馬鹿なんだね



そうだ、彼女はいつだって可愛らしい顔立ちに似合わない辛辣な発言をする。



「なんだ、知っていたのか」



まあね、と彼女は答える。



人差し指にぐるぐると巻き付いた髪はさながら蛇のようだ。



雌の蚊の話だが、と俺は再び口をひらく。



「食虫植物のように、蠅やらなんやらの虫を食う植物だっているんだ。なんら不思議ではないだろう」



「そう考えれば、そうだね」



2人の間に、しばしの沈黙が流れる。



どこか危うい沈黙だ。



「ねえ真ちゃん」



「…なんだ」






「お腹、空いちゃった」



彼女の唇が、三日月のような弧をえがく。



がぶり。

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