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□あーもんどなぎふとをごしょもうですか
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「テツくーん!」



「桃井さん?…わっ」



無駄に長い廊下を走り抜けて、大好きな彼にとびつく。



「どうしました?」



「はいこれ!テツくんにあげようと思って!」



「?ありがとうございます」



「えへへ!あけてあけてー!」



私の勢いにつられて、彼が空色のリボンをしゅるりとほどく。



バニラシェイクみたいに白い指先がとても綺麗。



「…チョコレート?」



ふたをあけて、なかみをみて、それからこちらをみて、首を傾けながら問いかけてくる。



「やだなーテツくん!今日、バレンタインデーだよ!」



「ばれんたいん……ああ、今日は2月14日でしたね」



箱のなかにおさまっているまあるい粒を、目を細めてみつめる。



私がみつめられてる訳じゃないのに、なんだかとろけちゃいそうな気分だ。



「あ、それでね、これね、手作りなの!」



「…え?これ、桃井さんが作ったんですか?」



彼がちょっとばかり怪訝な顔になる。失礼だ。



「もー!今回はレシピもちゃんとみたし、変なものもいれてないから、大丈夫!」



きっとおいしいはず!と自信満々な顔で宣言する。



「あ、いえ、そういうわけではなくて。とてもおいしそうだったので、お店で売られているものかと思って」



誤解させてしまってすみません、と謝る彼はどこまでも誠実で、いつもの彼だ。



「いいのいいの!勘違いしちゃった私のほうが悪いんだし!ごめんねテツくん!」



「いえ、桃井さんが謝る必要はありませんよ」



そんなテツくんもすてき!と、思わずこぼれそうになった心の声にかろうじてふたをする。



「あ、早速なんですが、いただいてもいいですか?」



そう言って小さく微笑む彼。



答えは無論、ひとつしかない。



「いーよー!もっちろん!食べて食べて!」



「ありがとうございます、いただきます」



そして、まあるい粒をひとつばかりつまんで、





「アーモンドのにおいがします」






君の驚いた顔がみたかった。
ただそれだけの話。

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フラグたてて終了っていう。

お久しぶりです、生きてます!
長い間の放置すみません。
またこれからちょいちょい更新していくつもりです。

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