Vomit Flower Sickness
□amnesia
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「…わたしは、だれですか?」
白い部屋の中で目を覚ました彼は、開口一番にそんなことを言った。
ばかだなあ、国見ちゃんは。
そういうときはまず最初にここはどこって言わなくっちゃ。
あえてテンプレなことは言わないのかな?
はは、国見ちゃんらしいね。
「ーー…及川っ!!!」
「あ、岩ちゃん?」
「馬鹿っ、お前今の状況わかって「わかんないよ」っ…!」
「わかるわけないじゃん。国見ちゃんが記憶喪失?笑えないよ、そんな冗談」
「……冗談じゃ、ねえんだよ…」
「やめて」
やめてよ…そんなしおしおした岩ちゃんみたくない。
いつもみたいに怒鳴って一発殴ってよ。
そしたらきっと、こんなクソみたいな夢から醒めるから。
「……おい、かわ」
「…なに」
「お前のせいじゃ「お前のせいじゃないって言いたいの?」っ!」
「あは、岩ちゃんも馬鹿なんだね。どう考えたって、俺のせいでしょ」
「っ違う!あれは、ただの事故で…!」
「事故だろうがなんだろうが、俺が打ったサーブが国見ちゃんにあたって倒れて記憶喪失っていう事実は変わらない」
そうだ、ぜんぶ、
ぜんぶ、なにもかも、おれのせいだ。