小説

□夢の世界でこんにちは
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「肩こりって最悪…」






きっかけは、朝起きたぼくの初めの一言だった。





練習はもちろん、ゲストで呼ばれるパーティーなどでバイオリンを弾いているため、最近肩こりが激しかったぼくは、無意識の内に肩を揉んでいた。




「託生、もしかしてバイオリンで、か?」




今日は休みのため家でくつろぎながら新聞を読んでいたギイが顔をこちらに向ける。




「うん、多分…いくら肩揉んでも全然治らないから、気分が悪い。ずっと肩になにか置いてるみたいなんだ」



「大丈夫なのか?」



「大丈夫、だとは思うけど」



「でもそれは大変だよなあ…」



何かを考えるように机を指でコツコツと叩くギイ。



高校生の時と変わっていない癖に小さく笑ってしまった。



ぼくが笑ったことにギイは気づいていないらしく、まだ机を叩いている。







ふと、手が止まった。




「ギイ、なにか良い案でもあった?」



ぼくがそう訊くと、



「今は秘密」



とだけ言ってまた新聞に目を通し始めた。





ギイが何を考えているかを知る由もないぼくは、次の日のことなんて考えもしていなかったのだ。
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