小説
□怪我には要注意。
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その日は、体育で柔道の受け身を習っていた。
ぼくの番が来て、柔道着を来た先生の前に立つ。
「葉山、行くぞ」
「は、はいっ」
柔道の、そして受け身を練習する時間が苦手なぼく。
受け身なんて出来ないよ…
そう心の中では叫ぶけど、どうせしないといけないので覚悟して一歩前に出る。
すると先生が近づいてきて、ぼくの世界が反転した。
急に怖くなったぼくは受け身を取るのを忘れ、目を瞑ってしまったのだ。
左腕から落ちていくぼくの体は、鈍い音をあげた。
ぼくだってそれなりに体重はある。
その体重を腕一本で支えるのだから、相当負荷がかかってしまったのだろう。
「った……」
「おい、大丈夫か葉山!」
「だい、じょうぶ…です…っ!」
起き上がろうと左腕に力を加えると、ズキリと走る痛み。
あまりの痛さに思わず倒れ込む。
「大丈夫じゃないぞこれ……おい、保健委員!葉山を保健室まで連れて行ってやってくれ」
「あ、はい!葉山君、大丈夫かい!?」
「…吉沢、くん」
走ってきた吉沢道雄にゆっくりと起こされる。
「立てる?」
「…左腕に力入れなければ、なんとか」
ぼくは吉沢に付き添ってもらいながら、保健室に向かった。
その途中、何度か痛みに顔を歪めた。
酷く、ないといいけど……
そんなぼくの願いは、校医の中山先生の言葉で叶わなくなってしまった。