小説
□ギイ君に嘘を吐いてはいけません。
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ぼくとギイが恋人同士になって早数ヶ月。
プラトニックな関係ではなくなったのだけれど、まだ同じ部屋だと緊張してしまうぼく。
「託生。まだ勉強してるのか?」
「あっ、うん。まあね」
緊張して、自分の部屋なのにどこか不自然になってしまうのを防ぐ為、ぼくは勉強をしていた。
…それも、大嫌いな英語の。
必死に教科書と参考書を見比べているのだが…
ううむ、分からない。
「どうした託生、そんなに唸って」
唸り声が声に出ていたらしい。
笑いながらそう聞いてきたギイがベッドから立ち上がり、読んでいた本を置いてこちらにやってきた。
「英語?ああ、そういや託生は苦手だったな」
勉強をしているぼくを横から覗き込んできたギイ。
息がかかる位近くに来たギイに、少なからずぼくはドキドキしてしまった。
「そ、そうなんだ。そういやギイは帰国子女だよね。英語得意なんだろ?」
それを紛らわすためにノートに目をやるが、聡明なギイはぼくを見て分かってしまったようだ。
「…そうだな、得意だぜ。英語、教えてやろうか?」
さっきよりも近い距離に思わずぼくは赤面してしまう。
…ギイの頬が緩んでいるのは気のせいだろうか。
「あ、うん!今の所は解けたから、次分からないところがあったら教えてくれる?」
それは嘘なのだけれど。今の所も分からないのだけれど。
何か腑に落ちないといった顔をしたギイは、
「ああ。質問ならいくらでも聞くぜ?」
と言った。
これで少しは離れてくれた!と思ったのも束の間。
なんとギイが椅子をぼくの隣に持って来て、そこで本を読み始めたのである!