小説

□欲求不満
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「はぁ…」



盛大な溜め息をついたのは、ぼくこと葉山託生であった。



「どうした?葉山」



章三が聞いてくる。


察しの良い風紀委員長サマは気づいているくせに!



「ま、どうせギイのことだろうけどな」


ほら、気づいてる。




「何で分かるの、赤池くん」


ぼくがそう聞くと、



「あの葉山が溜め息つくなんて、ギイが絡んでるに決まってるだろ?」



そう、自信満々に答えた。


流石、章三。


…の前に。




「…あのぼくがって、どういう意味?」



捉えようによってはとても馬鹿にされてるんですけど。



「気にするな葉山。褒め言葉だ」



褒め言葉にとれないのは気のせいなのだろうか。



「で?ギイ絡みだとして、溜め息の原因を教えてくれないか葉山クン」



「う、うん…」





ぼくは章三に、最近ギイと会えてないことを話した。




「成る程、ね。それでギイが恋しくなって溜め息、と」



「我ながら恥ずかしいとは思うんだけどね…」



恋人に会えないから寂しい、なんて。



「まぁ、少しは成長したってことじゃないか?葉山」



僕はごめんだが、と章三が付け足した。



「でも、ここの所ずっとだよ?赤池くんだって少しは寂しくならないのかい?」



「全然」


しれっと答えた章三。


すると何かを思い出したようにあっ、と声を出した。



「え?何、赤池くん」


「葉山は勿論知らないだろうが、ギイ最近苛々してるらしいぞ」



ギイが?



「なんで?」




すると章三は呆れたようにわざとらしい溜め息をついた。




「決まってるだろ」
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