賢者の石

□一章
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相変わらず煌びやかな広間は沢山の生徒で賑わっていた。


美しいろうそくが空中を乱舞し、作られた星空が輝いている。


先生方の前で列を為すフーリンを含めた新入生は黙って汚らしい姿をした組み分け帽子の前に立っている。


マクゴナガルに順番に名前を呼ばれ、帽子を被って組み分けがされていく。フーリンは静かにその様子を眺めていた。


「ハリー・ポッター!」


この名前を、彼女は・・・いや彼女に限らず待っていたのだ。恐らく今年の新入生で最も注目すべき存在。守るべき子供。世界の命運。


当然のように周りはざわついた。だが、おずおずと前に進み出た少年は、フーリンの想像とはだいぶ違っていた。


見た目こそ忌々しいジェームスに似ていたが、ぱっと見は気弱そうな少年。そしてフーリンの目を一層引いたのは、彼の目の色である。


リリーと同じ緑の瞳。


組み分け帽子は少々悩んでいたが、やがて覚悟を決めたように声を張った。


「グリフィンドール!!!」


やはりフーリンの予想通りだった。歓喜に沸くグリフィンドールの生徒達。


「次、レリエル・オークス。」


フーリンは自分の偽名を聞くと早足で椅子帽子の待つ椅子へ向かい、すぐさま組み分け帽子を被った。


「ふむ・・・君は・・・ああ、例の子だね?よろしい、グリフィンドール!!!」


組み分け帽子は何か聞いていたのか、難なくフーリンをグリフィンドールにした。


グリフィンドール生は賑やかに彼女を歓迎し、次から次へと握手を求められた。フーリンは好都合だと例の少年へと接触を試みる。


「はじめましてハリー。私はレリエル。よろしくね。」


にこっと効果音がつきそうな微笑みを向けてハリーの隣を陣取る。彼は少し戸惑いながらもよろしく、と返してくれた。本当に父親と似ているのは見た目だけなのかもしれない。


無事に全員の組み分けが終わると、ダンブルドアが簡単な挨拶(と言って良いものかも分からないが)をして宴が始まった。


ハリーが小声であの人おかしくない?とダンブルドアを指して言った時には残念ながらフォローはできなかった。


フーリンはちょこちょこ料理に手をつけながら、教師陣の席に目を向ける。


見覚えのある真っ黒な蝙蝠。眉間には皺が寄っている。元来、彼はこういう席が苦手だったから仕方がないといえば仕方がないが。


リリーが死に、その亡骸を抱きしめて泣いていた彼。フーリンは呪いをかけられて為す術もなく、リリーが死ぬのを黙って見ているしかできなかった。ただ呆然と、人の死を見ていただけ。


そしてすぐにその場を離れて、中の様子を伺っていた。涙を流すセブルスを見て、自分の無力さにイラつき、これほどまでに愛されていた彼女に嫉妬し、誰にも何も言わずに魔法の知識と技術を高めた。


それからは何度か印であの人に呼ばれていたが全て無視をした。だからきっと、あの人はフーリンを不審に思っているだろう。もしかしたら敵だと思われているかもしれない。


まあ、どうでも良いことだ。そもそもフーリンはあの人に対する忠誠心などさらさらないのだから・・・。あるのはただ一人の優しすぎて純粋すぎる人間を支えたいと想う気持ちだけ。もちろん、必要とあらばもう一度あの人の元に下ることも考えるけども。


そんな昔のことを思い出しながら彼の方に視線を向けると、彼の隣のターバン男が彼と話しているのが見えた。相変わらず何を考えているのやら分からない顔をしている。


彼はふっとこちらを見た。いや、正確にはフーリンではなくハリーを見たのかもしれない。


きっと嫌なことを思い出しているだろう。隣のハリーは何故か額の傷に痛みを訴えている。再び彼、セブルスに目を向けると彼の目には激しい憎悪、嫌悪が浮かんでいた。


やはり、ハリーの姿にジェームスを見ているのだろう。フーリンもあまり良い気持ちにはならなかったが、ハリー自身は今のところ良い子だと思う。


最後に、ダンブルドアより禁じられた森への立ち入り禁止、四階の右側の廊下の立ち入り禁止などが伝えられた。


禁じられた森は分かる。が、四階の右側の廊下に関しては思い当たる節がなかった。


監督生のパーシーですらその理由は知らされていないというのだから、これはダンブルドアに直接聞いた方が良いだろう。


なんだかハリーはわざわざ危険な所へ行く気がしてならなかったから・・・。


宴後はそれぞれ自分達の寮へと戻り、就寝となった。フーリンはハリーが眠るのを確認してから、先程の疑問を解決するため寮を抜け出して校長室に向かったのだった。
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