アンドロイドになった日

□二匹目
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ガヤガヤと周りが騒がしくなって千里は目を覚ました。休み時間か何かだろうか。顔を上げると目の前には……黄色い猫が二匹。


「あのさ、君は僕のこと知ってるみたいだけど、僕はその、君のこと知らないんだ。……どうして僕を知ってるの?」


ドラえもんが慎重に話す。キッドはこちらを睨んでいるような感じだった。


「んー有名だからかな」


嘘は言っていない。恐らく日本全国誰でも知っているだろうキャラクターだからだ。ただし……キッド含め、ドラえもんズは今の時代では知る人は少ないかもしれないが。


「僕そんなに有名なの!?」


素直に驚くドラえもんは可愛い。キッドは「簡単に信じるな」とか言っている。さすが将来はタイムパトロールで働くガンマンだ。


「じゃあ私の名前も教えるし、それでいいっしょ?私は鳴海千里。分からないことだらけだから色々教えてね」


頭を下げると、ドラえもんは納得したのかあっさりと「よろしく」と握手をしてくれた。キッドはまだ少し不服そうだがこれ以上言う気もないのかそのままドラえもんを連れてドラズのメンバーの元へと戻っていく。


カンフー服を着た王ドラ、マフラーを巻いたドラニコフ、角の生えたエル・マタドーラ、サッカー選手の恰好をしたドラリーニョ、アラビアンな帽子を被ったドラメッドV世。全員千里は知っていた。


これ以上不審がられるのも面倒なので言わないが……。楽しそうだなぁと思いながら七人を眺めつつ、次は道具実践だという話を聞いて絶望する千里だった。





さて、道具実践の授業が始まる。問題は様々あるが、ひとつに絞るなら“道具を持っていない”。忘れ物とかになるのかなぁと思ったが、どうやら千里以外にも持っていない生徒はいるらしく、貸出をされるようだった。


今回使うのは空気砲。キッドがいつも手にはめているやつだ。内容はシンプルに的当てで、なかなか楽しそう。


「二人一組で組め〜」


担当教員のその言葉、千里にとっては苦行であった。ひとりでの活動の多い彼女は昔から余る。そして今回も余った。


「ガウッガウッ」


途方に暮れる千里に、声を掛けてきたのはドラニコフだった。いや、何を言っているのかは不明だったが。


「……一緒に組んでくれるの?」


「ガウッ」


こくりと頷くドラニコフ。そうか、ドラえもんズは七人だから一人余るんだなぁとか考えながら、よろしくと握手をした。ドラえもんはキッドと、マタドーラと王ドラ、ドラリーニョとドラメッドが組んだらしい。


さて、肝心の的当て。千里は初めてということもあって、まず空気砲の威力に驚いた。腕に伝わる振動で腕がぶれて、思うように狙うことができない。


ドラニコフが必死に何か教えようとしてくれるが、言葉が分からない為どうにも上手くならない。ひとつも倒れない的を見ながら肩を落とすと、後ろから呆れたような声が飛んできた。


「な〜にやってんだ下手くそ」


本当のことを言われては何も言い返せないが腹が立つ。千里が後ろを向くと、そこには既に全ての的を撃ち落としたガンマンが立っていた。


「そこまで下手だといっそ清々しいな。お前、単位取れなくて落第するぞ?」


こんな別世界で落第しようがどうでもいいような気はしたが、もし帰れなかった場合は大変かもしれないとも思う。


「へーへー凄腕のガンマン様は暇ですねーもう終わってますもんねー。どうせ下手な人を貶すしかすることないんですよねー」


嫌みたっぷりに返すと、カチンときたのかキッドは怒鳴り声を上げた。


「なっ下手くそに下手くそって言っただけだろうが!口だけ達者なへなちょこ野郎め!」


そこへ、キッドと組んでいたドラえもんがなだめに入る。


「違うでしょキッド……ごめんね千里。キッドは、本当は千里に撃ち方を教えてあげようとしてたんだ」


「ば、馬鹿!そんなんじゃねえって!黙れドラえもん!」


怒りが続いているのか照れているのか、キッドは顔を真っ赤にして叫んだ。隣にいたドラニコフは微笑みながらキッドを見ている。


そうか、そういえばキッドはツンデレ属性の持ち主だったなぁと自分の中の彼の記憶を蘇らせる。ならばこちらが折れてやろう、と千里は頭を下げた。


「嫌み言ってごめんね。いきなり下手くそとか本当のこと言うもんだから頭にきちゃって。よければ教えてくれる?」


あまりにもあっさりと引いた彼女にキッドは拍子抜けをしたように目を見開き、「お、おう」と短く返事をして彼女の隣に立ち、あれこれ教えてくれた。


そのかいあってか、千里も全ては撃ち落とせなかったが、三割ほどは撃ち落とすことができましたとさ。(それでもクラスでは最下位)
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