アンドロイドになった日
□四匹目
1ページ/1ページ
さて、購買で買ったどら焼きを持ち、ほくほく顔で教室に戻る千里。
来た時に案内してくれたドラえもん、購買戦争で共に戦ってくれたマタドーラとキッドも一緒だ。
「いや〜それにしてもドラえもんやドラニコフが心配してくれた理由がよく分かったよ。あんだけ壮絶なら確かに買いに行く気は起きないわ」
思い出してもゾッっとする。恐らくマタドーラやキッドが助けてくれなければ食いっぱぐれていたことだろう。
「そうか?俺とマタドーラは毎日買いに行ってるぜ?」
たいしたことじゃないというように言うキッド。そりゃあ空気砲ぶっぱなしてたら楽勝だわなと思う。
だが、あれってアリなんだろうか。っていうか、校内であんな危険なもん使っても誰も何も言わないあたりが凄いと思う。
まぁ、その危険なものに助けられたから千里は何も言えないのだが。
「俺達と可憐なセニョリータを一緒にするなよ。これだからキッドは……」
やれやれと頭を振るマタドーラ。
うん、確かにマタドーラのような立派な角はないし、重そうなロボットを吹き飛ばすような怪力も千里にはない為、同じにされては困る。
勿論キッドのような空気砲はおろかそもそも何も道具など持っていない。はっきり言って無謀な挑戦だったのだろう。
「あ、そういえば私まだマタドーラには名乗ってなかったよね。私は千里。よろしくね」
いつまでもセニョリータ呼びではしっくりこない。いや、寒い。そう思って千里はマタドーラに改めて名乗った。
「千里……名は体を表すと言うが美しい貴女にぴったりだ。よろしく、千里」
こんなことばかり言ってよく歯が浮かないな〜などと考えていると、丁度教室に着いた。教室は相変わらず騒がしい。
「遅いですよ三人共!」
「待ちくたびれちゃった〜」
「我輩、もうお腹ペコペコであ〜る」
「ガウ!」
王ドラ、ドラリーニョ、ドラメッド、ドラニコフが戻ってきた三人に抗議の声を上げた。恐らくドラえもんズの七人でいつもお昼を食べているんだろう。机がグループの形に寄せられ、それぞれお昼を広げている。
「ごめんね〜私が三人を借りちゃったから」
遅れたのはだいたい自分のせいだと千里は四人に頭を下げた。ドラニコフは「ガウ」と言って千里に寄り、腕を軽く叩いた。千里はどうしたのかと首を傾げる。
「ドラニコフ心配してたみたいだよ」
ドラえもんが通訳してくれてその行動の意味を知ると、どうしようもなく……。
「ニコフ……可愛い」
人間である千里より背の低いドラニコフは上目遣いで、言われてみれば心配そうに千里を見ているのが分かる。
とても可愛い。
千里はドラニコフを撫で回した。その横でマタドーラが、たまたま購買で一緒になった千里が買うのを手伝っていたからだと説明していた。
「まーた女の子に鼻の下を伸ばしていたんですか。全く懲りない人ですねぇ。また振られるのがオチですよ」
「ちげーよ!俺はただ、困っている女性に手を差し伸べただけだ」
「下心が見え見えなんですよ貴方の場合は」
何故か言い合いに発展しているマタドーラと王ドラ。やはり二人は犬猿の仲なのだろう。それを、ドラえもんとドラメッドがなだめていた。
「どうでもいいから早く食おうぜ〜」
先に席に着いたキッドはもう限界のようで、大き過ぎる腹の音を恥ずかしげもなく鳴らしていた。
「ねぇ、良かったら君も一緒に食べない?」
思う存分ドラニコフを撫で回した後の千里は、ドラリーニョに手招きをされて、ひとりで食べるのもなんだしいいかなとその辺の椅子を拝借して適当に座った。どうにか落ち着いたマタドーラは千里の隣に座り、王ドラは千里の正面に座った。
なだめていたドラえもんも空いている方の千里の隣に座り、ドラメッドはドラリーニョの隣に座った。ドラニコフはキッドの隣に座っている。さぁ食べるか、と全員がご飯に手をつけた時、無情にも昼休み終了のチャイムが鳴るのだった。
「「「「「「「そりゃないぜ(よ)(であ〜る)(です)〜(ガウ)」」」」」」」
「ま、こんなオチだろうと思ったけどね」