賢者の石
□六章
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寮に戻った頃にはハリー、ロン、ハーマイオニーは仲良しになっていた。今まで喧嘩をしていたとは思えない。その姿を、フーリンは親が子供の成長を見守るような目で見ていた。
「あ、レリエル!おかえり!」
一番に気付いたのはハリーだった。ハリーが気付いたら残り二人も共にフーリンの方に集まってくる。
「何だったんだい?」
一人だけ残されたことを言っているのだろう。ロンは少し心配そうに聞いてきた。
「怪我はなかった?みたいな感じかな…減点はされてないから安心して。」
緩く笑えば三人はほっとした顔になる。
「それより、三人は仲直りできたんだね。良かった。」
フーリンがそう言えば、ロンはポリポリと頬を掻いて照れ笑いをしながら、
「レリエルがハーマイオニーに色々言ってくれたんだろ?ありがとう。」
と言った。
「ロン、それもそうだけど…一番お礼を言わなきゃならないのはトロール撃退の時のことよ。レリエル、貴女がいてくれて良かった。保護呪文をかけられた時、凄く安心できたの。」
ハーマイオニーも優しくはにかんだ。三人共とても素直な良い子であると再確認し、フーリンと三人はまだやっていたハロウィーンのパーティを楽しんだ。
そして皆が寝静まった頃、フーリンは一人寮を抜け出した。向かったのはセブルスの私室である。足の怪我が心配であったし、恐らくもう、何かは動き出している。
(己の為すべきことを為す。)
心で呪文のように唱えた。忘れてはならない己の目的。
(為すべきことは…?)
(セブルスを支える。)
(それ以外は?)
(必要ならば利用し、邪魔になったら消し去ってしまえ。)
心の中で自分自身と会話をする。こうしていくことで、自分の考えを明確化していくのだ。
(欲張るな。弱き一人の人間に沢山は救えない。たった一人で良いだろう?愛してやまないたった一人の優しき人をただひたすらに…。)
(支えろ。駒になれ。これ以上苦しめない、苦しめたくない。……苦しむのは私だけでいい。)
自問自答を繰り返すうち、地上よりも随分と気温の低い地下牢へとついた。真夜中のホグワーツというのはかなり不気味だが、この地下牢はその中でもトップクラスの不気味さである。
コンコンコン、とノックを三回すれば短く返事が返ってきた。今夜の見回りが彼でなくて良かった。おかげで入れ違いにならずに済んだ。
「こんな時間に誰だ。」
「オークスです、スネイプ先生。」
誰が聞いているとも知れないので、一応偽名の方を名乗る。と、無言で扉が開かれた。誘われるがまま、フーリンはセブルスの私室に入る。後ろ手に扉に鍵が掛かる音がした。中はゲテモノの薬漬けが並ぶ、彼らしい研究室だった。
「何をしにきた。お前は今一応生徒だろう。とっくに消灯時間は過ぎているぞ。」
眉間に皺を寄せながら、彼は言った。
「セブ、もう内通者は見つけたんでしょ?」
フーリンは彼の言葉には耳を貸さない。そんなことを話にきたわけではないからだ。フーリンの質問に、セブルスは顔をしかめた。
「だったら…なんだ。」
「誰か教えて?私にも知る必要がある。あの子を守る為に。」
彼女がこう言うことは分かっていたのだろう。セブルスは分かりやすく嫌そうな顔をした。
「フーリン。ポッターは勿論、お前もあの方に狙われているのではないかね?」
「そうね。そうかもしれない…あの人は私をわざと生かしたのだから。」
次に盾つけば間違いなく…。それでも、そんな状況はセブルスとなんら変わりはない。
「それでも…命をかけてでも成し遂げたいことがある。それは、セブも同じでしょ?」
そう問えば、彼は何も言わなかった。代わりに返ってきたのは、彼女の最初の問いに対する答え。
「…クィリナス・クィレル。間違いない。」
「……そう。これまでハリーを狙ったのも…トロールを引き入れたのも彼ね。」
フーリンが確認するように言えば、頷きが返ってきた。それだけ分かれば良い。後やりたいここといえば…。
「ありがとうセブ。それじゃあ足を見せて。」
唐突だった。彼の顔はどんどん苦々しいものになってゆく。そんな彼を、フーリンは強引に黒いソファへと座らせた。
「はいはい。そんな顔しても私には無駄だから。どうせ自分ではロクな治療しないんでしょう。」
セブルスは無言だが、明らかに不機嫌オーラを出している。だが、そんなの彼女には関係ない。長年の付き合いにより、彼のそんな態度には慣れきってしまっているからだ。
「エピスキー(癒えよ)。」