賢者の石
□二章
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あの組分けから一晩。フーリンはハリーと、今年入学したウィーズリー家の六男…ロンと共に行動することにした。どうやら、ロンはハリーの最初の友達らしい。
寮を出た三人はまず周りの人間にうんざりすることになる。噂のハリーに、好奇の視線をぶしつけなまでに向けていたからだ。
居心地が悪いことこの上ないし、正真正銘新入生のハリーとロンは誰得仕様の動く階段や開けるのに一苦労な扉に苦戦していたのだから。
極めつけにはゴーストのビーブスが邪魔をしてくる始末。後であいつにはお仕置きが必要かもしれない。
フーリンは本来ならばとっくに卒業している身なのでそんな面倒なホグワーツにも慣れていたし、道に迷った二人にも近道など教えてあげれば良かったのだが、変に詳しいと色々面倒かもしれないと思って黙って傍観していた。
それにしても、一度受けた内容の授業というのは実に退屈なもので、フーリンは主に座学の時間は先生の話を聞き流し、昔から好んでいる魔法薬学についての論文などを読んでいた。
そういった意味で、魔法史の授業はとても充実していた。
だが、さすがにマクゴナガルの授業はそうはいかなかった。
「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なものの一つです。いい加減な態度で私の授業を受ける生徒は出て行ってもらいますし、二度とクラスには入れません。初めから警告しておきます。」
このような脅しにも似た台詞。そういえば昔も同じことを言われたな〜なんてフーリンは懐かしんでいた。
彼女は歳こそ取ったものの、中身は何も変わっていないのだと少し安心した。彼女の平等な厳しさはとても好ましく思っていたからだ。
初回の授業ということで、難しいことはしない。マッチ棒を針に変えるだけだった。それでも新入生には相当難易度が高いらしい。周りの生徒(ハリー、ロン含め)はいくら杖を振ってもマッチ棒は少しも変化を見せなかった。
フーリンはできたら目立ってしまうと思ってできないフリをしたが、唯一ハーマイオニーという少女が見事マッチ棒を針に変えてみせた。
他の授業でも積極的に発言していた子で、目に見えた優等生。きっとよほど努力をしたのだと思う。
マグゴナガルはそんな彼女を誇らしく思ったのか、とても柔らかな笑みを向けていた。
その後のクィレルの授業はフーリンには苦痛そのものだった。なんといってもにんにくの強烈な臭いが教室にむせ返っていたからである。
いくら純血の吸血鬼ではないとはいえ、半分は吸血鬼。この空間にいないといけないというのはつらいものがある。いや、恐らく普通の人間でもこの臭いはキツイだろう。
フーリンは、今度からは嗅覚を鈍らせる魔法を自分にかけてから受けようと心に決めた。
金曜日、いよいよセブルスの魔法薬学の日。朝食の時間にハリーとロンの近くに座ると、ロンは顔をしかめていた。
どうしたのかと問えば、今日の魔法薬学が憂鬱なのだという。まあ、一般的に言えば魔法薬学は小難しいし好かれる科目ではない。でも、彼が嫌がっているのは魔法薬学そのものではなく、どうやら担当である彼・・・セブルスらしい。
上級生に兄弟のいるロンだから、あることないこと吹き込まれたのだろう。彼はあまりに誤解されやすいし、また、本人もあえて誤解をさせているような節がある。全く損をする人物だ。いや、損だと思っていたら態度を改めているだろうから、損だとも思っていないかもしれない。
はあ……と溜息をつけば、ロンはそれを自分の意見に対する同意と取ったか同情の眼差しで見てくる。
「ロン。受ける前から苦手意識は良くないわ。特に一年生は全ての教科が必修なんだから、好きな方が楽しい学校生活になるでしょう?」
諌めるように優しく言えば、ロンはバツが悪そうに「そうだけど・・・。」と呟いた。
全く、余計な知識を一年生に吹き込むなんて先輩としてどうなのか……。まだ11才の子供。自分の目で見て、自分で善悪を見極めることなんて不可能だろう。周りの影響を受けやすく、純粋故に疑うことを知らない。そんな彼らに前もって否定的意見なんてものは言ってはいけないだろう。
……どのみち、セブルスはあの性格だから最終的にはマイナス印象しかつかないだろうけど。
丁度その時、ハリーにふくろう便が届いた。内容はハグリッドからのお茶会の誘い。ハグリッドはよほどハリーのことを気にかけているのだろう。
ハリーは喜んでイエスの返事を出した。