賢者の石

□一章
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「イッチ年生はこっち!こっちだ!」


ダンブルドアとの会談から数日後。いよいよ新入生が入る日。汽車がくるタイミングでフーリンも混ざろうと自分の存在感を魔法で限界まで薄めて待っていた。


汽車の前ではハグリッドが大きな声で誘導をしている。


あれだけ存在感のある人がいるのだから、一人くらい汽車から出てこなかった新入生がいても分からないだろう。


フーリンは何食わぬ顔で新入生の列に混じった。


険しくて狭い小道を、ずらずらと並んで歩く。ハリーはどの子なのだろうか・・・。


あまりキョロキョロしていると目立ってしまうので控えたが、早く見つけたくてつい視線を巡らせてしまう。結局歩いている時点では見つけることは叶わなかったわけだが。


「皆、ホグワーツが間もなく見えるぞ。」


ハグリッドの言葉通り、ホグワーツ周りの黒い湖に出て、四人組でボートに乗る。


フーリンと共に乗った少年は、ブロンドの髪をキッチリと纏めていて、どこか上流階級を思わせる出で立ちだった。


同じ死喰い人であり、先輩である一人の貴公子が思い浮かぶ。面白い人ではあったが、一緒にいると疲れる人。


なんだか見れば見るほど似ている気がしてきた。そういえば、息子がいた気がするし。


だとしたらあまり関わらない方が良いかもしれない。何かと面倒そうだし。


「・・・何ジロジロ見ているんだ。」


どうやら彼の顔を見つめながら考え事をしてしまっていたらしく、不機嫌そうに声を掛けられた。


関わりたくないと思ったばかりだというのに・・・自分には潜入とか向かないのかと少々自信をなくしたが、まあ仕方がないので適当に相手をしておくことにした。


「ごめんね。あんまりにも綺麗なブロンドだったからつい・・・私はレリエル・オークス。貴方の名前を聞いても良いかな?」


できるだけ子供らしく振舞う。すると目の前の彼は褒められて気を良くしたのか、ドヤ顔で名乗った。


「僕はドラコ。ドラコ・マルフォイだ。こっちはクラッブとゴイル。」


やはり。ルシウス先輩の子供だ。げんなりするのを抑えてフーリンは苦笑いをした。クラッブとゴイルと紹介された二人の少年は体格が良く、ボディガードのようだった。若干引き気味のフーリンの様子に気づくこともなくドラコは話を続けた。


「レリエル・・・夜の天使か。確かに、君の髪は夜のような色だな。目はブライトイエローで月みたいだ。」


彼はじっとこちらを見てくる。なんだか先輩に見られているようで緊張した。


そうこうしているうちにボートはホグワーツに着く。暗いトンネルを抜けた先にある地下の船着場。


扉の中にはマクゴナガル教授が待っていた。


前と変わらない厳格な顔つきは、教授と呼ぶに相応しい。


ハグリッドからマクゴナガルにバトンタッチされた後、フーリン達は組み分けについての説明をされた。


それぞれがザワザワと落ち着かない様子でいる中、ドラコはスリザリンに入るんだと意気込んでいた。


まあ彼ならまず間違いなくスリザリンだろう。連れのクラッブとゴイルもね。


フーリンはダンブルドアに話を通したし、ハリーと同じ寮に配属されるだろう。


ハリーはというと、どんな人物かは知らないが両親共にグリフィンドールであるし、恐らくはハリーもグリフィンドール。となるとフーリンの寮も必然的に・・・。


あまりグリフィンドールに良い思い出がないだけに、気が重いがこれも全ては彼を守る為である。


ほとんど決まりきった組み分けだけに茶番にしか感じない。


人知れずため息をついた頃、マクゴナガルが再び新入生を引率し、広間に向かった。
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