アンドロイドになった日

□一匹目
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「死にたい」


開口一番に出てきた言葉。


理由は簡単、学生にはつきものの定期テスト。


千里は家を出てから学校までの道中、ひたすら念仏のように死にたいと呟いていた。周りの人間はそんな不審な女子高生を避けるか、もしくは遠目でひそひそと井戸端会議のネタとする。


学生というのは不思議なもので、テスト期間になると掃除がしたくなり、掃除時に見つけた懐かしの漫画を全巻読破し、またまた見つけてしまった懐かしのゲームを最初からプレイしてしまう生き物なのである。彼女はその筆頭だ。


「れ、れっつぱ〜り〜……」


その筆頭じゃない。


段々と、死にたいと言うのはおかしいと感じてきた。そう、自分が死ぬのではない。テストが死ねばいいのだと考え始めたのである。


「プリーズギブミーmoshimo-box!!!」


片言の英語で(最後だけちょっと発音良かった)叫べば、不審な視線を向けていた周りの人々はびくっと肩を跳ね上げ、そしてそそくさと彼女から離れていった。


「ドラえも〜ん!!!テストがいじめてくるよ〜なんとかして〜!」


人がいなくなったことで更に吹っ切れたのか、漫画に出てくる便利な猫型ロボットの名前を叫び始める。そんなものが、この発想の穢れきった少女の元にきては大変である。


が、神はどのような生き物にも等しく慈悲を与えてくれる。それはこの少女に対しても、だ。


曲がり角、少女の目の前に赤くて丸い尻尾らしきものが揺れた。それはまるで、件の猫型ロボットのもののようで……。


「ド、ドラえも〜ん!!!」


財布とスマホくらいしか入っていないスクールバッグを振り回しながら、彼女はその尻尾に向かって一目散に駆け出した。


期待などはしていない。さすがにそんなものを信じる程、彼女は子供ではないのだから。


千里がその尻尾を掴んだ、その時。



“ようこそ、ロボット養成学校へ”



確かに機械的な音声が聞こえた。
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