私と貴方とあの子と彼
□三乱
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ある朝のことだった。
陛下に呼び出され、私と卿とソードとブレイドは玉座へと向かった。
あの馬鹿陛下のことだ。ろくな用じゃないだろう。
言い渡されたのは、カービィとの決闘。
表向き家臣なので卿は逆らうことをしなかった。それに、彼を鍛える良いチャンスだと思ったのかもしれない。
早急に、先日決まったカービィの家に手紙を出した。
約束の場所はカブーの谷。万が一にも邪魔が入らぬよう、私やソード達も同行することにした。
着いたカブーの谷ではフームとブンの焦ったような声が聞こえた。
卿に勝てるわけない、謝って逃げようと。
そんなことは、私も卿も許さない。
「それは無駄だ。決闘を避けたいか?なら何故ここにきた。」
フーム達の、いや、フームの考えなどお見通しだろうに、卿は問いかけた。
「貴方とお話がしたかったの!!!」
私達の立っている場所は崖の上。フーム達は下にいるのでフームは上を見上げて声を張り上げた。
私達は飛び降りて、一応言い分を聞くことにした。何を言われてもやめるつもりは毛頭ないけど。
「貴方はカービィの理解者だと思っていたわ!」
「お前はデデデの何なんだ!」
フームもブンも少々怒り気味だ。
何も知らない子供。目の前の事実しか目に入らない。
「私は陛下の忠実な臣下。ご命令には逆らえん。」
感情を露わにしている二人に対して卿は冷静そのもの。当たり前だ。彼にはカービィを殺すつもりなどない。
「そんな人だったの!」
尚も怒り、こちらにこようとしたフームの前に私が立った。
「・・・貴方達がどれだけ言い募っても、卿が決闘をやめることはありません。カービィも了承したからここへきたのでは?」
私の言葉に、敵意剥き出しの目を向けるフーム。
言い方が悪かったかもしれない。子供相手なら、こう言えば良いだろうか?
「・・・貴方達はカービィの力を信じていないのですか?」
そう言えば、フームは少しの迷いを見せた。これで彼女も手を出すことはしないだろう。
その間に卿は決闘を始める。
「カービィ!来た以上は覚悟ありと見た!私も本気だということを教えておく!」
卿は腰に差した聖剣ギャラクシアを抜き、勢い良くカービィに斬りかかった。
・・・いや、殴りかかったと言った方が正しい。だってカービィが斬れることはなかったから。
頬が腫れることはあれど、どれだけやってもカービィの身体から出血はない。
卿の剣戟が止んでから、カービィは立ち上がり、吸い込みを始めた。
卿を吸い込むつもりだろうが、卿がその大きな口に入ることはなかった。
辺りに砂埃が舞い、カービィの口には岩の破片などが吸い込まれていく。
やがて疲れて吸い込みをやめたカービィに、卿は静かに言った。
「カービィでも吸い込めない敵はいくらでもいる。極端に重いか、あるいは大きすぎるか。」