I want to protect you

□二章
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先日、フームに城に住むことを勧められたが、断った。


いつカスタマーサービスから連絡が入るか分からないから・・・。


幸い、この宇宙船は日常生活を送るのに事欠かない。


ううん、違う・・・。


どうあっても、日常には戻らない。


温かい母の手料理。


私の名を呼ぶ父の声。


私の服を引っ張る弟。


ついこの前までは当たり前のようにあった・・・。


私の日常。


もう戻れない。


・・・最初の二つは、完全に失ってしまった。


だから・・・せめて残った最後の一つだけは・・・。


守りたい・・・。


もう、失いたくないから・・・。


恨めしい・・・。


宇宙船の連絡画面を見る。


わざとらしいあの笑顔。


あんなものを映す画面なんて・・・壊せたらいいのに。


そんなこと、できはしないと・・・分かっているけど。


思わずにはいられない。


マナトは元気にしているだろうか?


心配だ・・・。


私の心配などお構いなしに、ターゲットは私を呼びにくる。


「リマナ!いるか?」


宇宙船の扉を開け、私は偽りの笑顔を貼り付ける。


「なんでしょうか?」


「そなた、私の部下になるのだろう?ならば、修行をしようと思ってな。」


「修行・・・と、いいますと?」


「勿論、騎士修行だ。」


騎士修行・・・。


そうか・・・彼の部下になるということは、私は騎士にならなければならない。


演じなければ・・・彼の忠実な部下を。


「分かりました。よろしくお願いします。」


「ああ。・・・では、行くぞ。」


メタナイト卿に連れられてきたのは海岸。


「あの、それで・・・何をすれば?」


「とりあえず、ここからププビレッジを30周しなさい。その間、私は仕事をしてくる。」


「さ・・・30・・・?」


「さあ、はじめ!」


言われるがまま、私は海岸から走り始めた。


私は特に運動が苦手なわけではなかったが、この村30周はキツイ・・・。


10周あたりで、ブン達の面倒をみているフームに会った。


「リマナ!?どうしたの!?」


汗だくで、過呼吸気味になって走っている私を見て、フームは駆け寄ってきた。


「はあ、はあ、しゅ、ぎょ、で、す・・・。」


「修行!?メタナイト卿に言われたの!?」


私は走りながら無言で頷いた。


「こんなの・・・酷い!一体どれくらい走れって言われたの?」


「む・・・ら、さ、じゅ・・・う。」


「村を30周!?そんなの無理よ!私、メタナイト卿に抗議に言ってくるわ!」


今にも走り出しそうなフームを力の入らない手で掴む。


そんなことをされたら困る。


きっと、彼は試しているのだ。


ここで自分に甘えたら、フームの優しさに甘えたら、一生彼に信用してもらえない。


そんな気がした。


私は・・・彼を騙さなければいけない。


そのためには・・・心を閉ざされたままでは困るのだ。
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