I want to protect you

□十五章
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「はあ・・・。」


ため息が漏れる。


本当にどこまで馬鹿なのか。


こんな気持ちがあっても、誰も幸せにはなれない。


皆傷つくだけだ、皆。


伝えることすらできはしない、無駄で愚かな感情。


間者なんて慣れないことをして、弟のこともあって、そんな時に優しくされたから勘違いしているだけ。


そう思いたい。
そう思えば、誰もが救われる気がする。


きっと・・・。


「リマナ。できたぞ。」


ぼーっとした意識を覚まさせるように、彼の声が私を現実に引き戻す。


持ってきたのはおかゆ。・・と。


「なんですかこれ。」


剥きかけの・・・林檎?


これは何かの嫌がらせだろうか。


っていうか、何故私と同じものを作るのか。


「その・・・一応ウサギのつもりなんだが。」


・・・ウサギ?


そう言われてみれば・・・ギリギリ見えなくも・・・いや、見えない。


「ふっ・・・あははははは・・・・・。」


まさか、あのメタナイト卿が林檎をウサギさん切にしてくるとは思わなかった。


身体はだるいし、頭も痛いはずなのに、大声で笑ってしまう。


ああ・・・もう・・・。


これ以上好きになんかなりたくないのに。


「・・・良かった。」


思いっきり失礼なことをしたというのに、彼も笑っていた。


仮面をつけていても分かるくらい、それはもう、優しげに。


「・・・リマナは無理して笑うことが多い。本当に笑ってくれて、良かった。」


「っ・・・・・・・・・・。」


顔が赤らむのが分かる。それが熱のせいではないことは、自分でも分かった。



好き



そんなこと、言えるはずもない。


私は間者。彼は監視対象。私には、守るべき弟がいる。


「・・・顔が赤くなってきたな。熱が上がったのかもしれない。早く食べて横になりなさい。」


最早おかゆの味も分からなかった。


無理矢理詰め込んで薬を飲み、さっさと布団を被る。


・・・つらい。苦しい。


口には出せない。弟を守り、自分も守るには、嘘をつき続け、与えられた仕事をこなすしかないのだ。


寝てしまおう。


寝ている間は、何も考えなくて済む。


彼のことも、弟のことも、何もかも。


そのまま、私は意識を手放した。





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