賢者の石

□三章
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セブルスは最後まで黙って聞いていた。フーリンは不安だった。自分はどんな言われようをされるのか。もしかしたら顔も見たくなかったかもしれない。そう思うと顔を上げることができなかった。


「……それで、散々貴様を捜していた我輩には何も言わずにホグワーツに潜入していたということか。」


溜息と共に吐き出される言葉に、フーリンはビクリと肩を揺らした。だが、考えていたような罵倒や蔑みは彼の口から紡がれていないし、怒っている様子もない。


「だがいまいちお前の目的が分からんな。お前は何をしたくてホグワーツに戻ってきた?あのお方を殺す為……ではないだろう?」


「私は…ハリーを、守りたくて。」


フーリンの言葉に、セブルスは訝しげな表情を見せる。


「あの時、リリーを守れなかったから……リリーが守ろうとしていた子供であるハリーをこれから守っていこうと思ったの。」


そう言っても、彼には何のことやら理解できない。別にリリーとフーリンの仲が悪かったわけではない。むしろ関係は良好であったのは確かだが、命をかけて守ろうとするほどの親友であったかといえばそうでもない。ましてやその子供など……守る義理はないはずだ。


そんな彼の思考を読み取ったのか、フーリンは再び口を開いた。


「ごめん、説明不足ね。セブはきっと、リリーと同じ瞳のあの子を守ろうとするだろうなって。リリーの遺志を汲み取るって考えた。だから、ハリーが入学するまでに魔法を磨いた。貴方一人に背負わせたくない、戦わせない。私も一緒に…セブを支えたいから。」


結局は全てセブルスの為に何かしたいという自己満足なのだと伝えれば、ようやく納得したようだった。


「変わらんな……昔から何かと世話を焼いていた、お前は。我輩を支えたいなどと言ってくるのは後にも先にもフーリンだけだろう。」


困ったような顔をされたが、拒絶する様子はない。諦めたといった方が正しいかもしれないが。


「良いのか?死ぬかもしれないんだぞ。それに、お前に利点なんか欠片もない。」


最後に確認するように問われたが、残念ながらフーリンの答えは決まっている。


「私は、セブがつらい時には一緒に苦しむ。嬉しい時には一緒に喜ぶ。今までだってそうしてきたつもりだし、これからだってそう。私達、親友でしょ?」


駄目押しに、リリーが死んだ事についても自分は同じ死喰い人であり、あの場にいたのだから贖罪は共にすべきだと言えば、彼は渋々納得した。


優しいセブルスだから、本当はこんなことに関わらせたくなかったのだと思う。それでも、フーリンの決意は固かった。


セブルスには幸せになって欲しい。笑顔でいて欲しい。彼に迫るつらいこと、悲しいことはできるだけ排除したい。それこそが、彼女の絶対的な目的だった。


彼から恋愛的愛情を求めるつもりはない。そりゃあ、もらえるならそれに越したことはないが、もらえなくてもそれはそれで良い。ただ、愛されることを知らない彼をせめて自分が愛してあげたい。


「さあてセブ、おでき治す薬どうする?調合する?」


話はこれまでというようにフーリンは当初の目的へと話題を替えた。


「いい。できることは分かっている。」


そう言って、セブルスは背を向けて採点やらの仕事に戻って行った。邪魔をしてはいけないと、フーリンは静かに研究室を去る。


(真面目に先生してるのね…あのセブが。)


人との関わりを極端に嫌っている彼が、教師をやっていると思うと微笑ましい。今度自分も何かサポートしようと決めてグリフィンドールの寮へと戻って行った。
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