君がいる夢、あなた達がいる夢

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夢を見続けて数週間。


思えば俺は、●のことを何も知らない。


年齢も住んでいる場所も、本当に存在しているのかすらも。



――――――――



今日は●にいろんなことを聞こう。

そう決めて寝たものの、いざとなるとタイミングがつかめない。

俺と●以外の3人がゲームをしている今がチャンスなのに。



なんて声かければいいんだろう。いきなり年齢とか聞くのってやっぱり失礼だよね。女性だし。住所だって怪しまれるっていうか、聞いて何をしようってわけじゃないんだけど



「……さん?」



いきなりだから不自然じゃないかなあぁどうしよう。やっぱり今度にしようか。いやきっくんなら自然に聞いてくれそうだから頼んでみようか



「FBさん?」

「ひゃい!?」



目の前に●の顔が現れてびっくりしてつい噛んでしまった。



「ひゃいって…w どうしたんですか? ボーッとして」



「あっ、いや、考え事してて」


「考え事?」


「うん… ねえ、●」


「なんですか?」


「ん、と…」



●は優しく笑って、俺を急かさないで待ってくれている。


釣られて俺の頬も緩んで、なんだか緊張がどこかへ行ってしまった。



「●はさ、どこに住んでるの?」

「あー! それ俺も気になってた」

「ふぉ」



いつの間にか3人はゲームをやめ、俺たちを囲んで輪になっていた。



「抜け駆けしてんじゃねえよ」

「あばっ」



あろまに叩かれた… でもいつもより全然痛くない。

夢だからかな。



「で、どこなんだ?」


「青森です」


「あおもり!」


「り、りんご!」


「ごっつ遠いね」


「ねぶた見たことないわ。いい写真撮れるべ?」


「べらぼうにいいのが撮れます」



やっぱりノリがいい。


俺たちについてこれるなんて頭の回転早すぎるでしょ。



「青森か。いっつも通り過ぎるだけだったな」


「えおえおさん北海道住みなんですか?」


「いや、今は東京」


「俺たち全員ね。全員が移ったのは去年。生まれは北海道」


「ってことは道産子都会人ですね」


「新しいw」


「それいただくわw 次の自己紹介で使お」


「とうとうネタ切れでパクリか?w」


「ちっがーう! 俺のインスピにびびっときたんだ!」


「毎回ほんとご苦労様だな」



「あの、自己紹介って、 …合コンとかですか?」



一瞬、間ができた。


あー、そっか。



「違くて、えーと、動画の最初で言う自己紹介?」


「動画投稿してるんですか! すごいですね!」


「俺たちのこと知らない?」


「…すみません。もしかして有名なんですか」


「まぁ、公式に呼ばれるくらいには」


「ええ!?」



意味が分かって驚いてる、ってことはニコ動は見てるのか。



「ゲーム実況って見たことある?」


「毎日見てますよ! 大好きです」


「すぽおおおおおおん!」


「!?」


「おいきっくんびっくりするだろ」


「実は俺たち
ジリリリリリッ






「…タイミング悪いなあ」



まあでも俺たちがゲーム実況やってるって●が知ったところで何も変わらないだろうし、別にいいか。


●のこと、青森に住んでるってことしか知れなかった。


でも毎日会えるんだ。


また今度聞けばいいか。




さあ、今日も仕事だ。



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