君がいる夢、あなた達がいる夢
□06
1ページ/1ページ
夢を見続けて数週間。
思えば俺は、●のことを何も知らない。
年齢も住んでいる場所も、本当に存在しているのかすらも。
――――――――
今日は●にいろんなことを聞こう。
そう決めて寝たものの、いざとなるとタイミングがつかめない。
俺と●以外の3人がゲームをしている今がチャンスなのに。
なんて声かければいいんだろう。いきなり年齢とか聞くのってやっぱり失礼だよね。女性だし。住所だって怪しまれるっていうか、聞いて何をしようってわけじゃないんだけど
「……さん?」
いきなりだから不自然じゃないかなあぁどうしよう。やっぱり今度にしようか。いやきっくんなら自然に聞いてくれそうだから頼んでみようか
「FBさん?」
「ひゃい!?」
目の前に●の顔が現れてびっくりしてつい噛んでしまった。
「ひゃいって…w どうしたんですか? ボーッとして」
「あっ、いや、考え事してて」
「考え事?」
「うん… ねえ、●」
「なんですか?」
「ん、と…」
●は優しく笑って、俺を急かさないで待ってくれている。
釣られて俺の頬も緩んで、なんだか緊張がどこかへ行ってしまった。
「●はさ、どこに住んでるの?」
「あー! それ俺も気になってた」
「ふぉ」
いつの間にか3人はゲームをやめ、俺たちを囲んで輪になっていた。
「抜け駆けしてんじゃねえよ」
「あばっ」
あろまに叩かれた… でもいつもより全然痛くない。
夢だからかな。
「で、どこなんだ?」
「青森です」
「あおもり!」
「り、りんご!」
「ごっつ遠いね」
「ねぶた見たことないわ。いい写真撮れるべ?」
「べらぼうにいいのが撮れます」
やっぱりノリがいい。
俺たちについてこれるなんて頭の回転早すぎるでしょ。
「青森か。いっつも通り過ぎるだけだったな」
「えおえおさん北海道住みなんですか?」
「いや、今は東京」
「俺たち全員ね。全員が移ったのは去年。生まれは北海道」
「ってことは道産子都会人ですね」
「新しいw」
「それいただくわw 次の自己紹介で使お」
「とうとうネタ切れでパクリか?w」
「ちっがーう! 俺のインスピにびびっときたんだ!」
「毎回ほんとご苦労様だな」
「あの、自己紹介って、 …合コンとかですか?」
一瞬、間ができた。
あー、そっか。
「違くて、えーと、動画の最初で言う自己紹介?」
「動画投稿してるんですか! すごいですね!」
「俺たちのこと知らない?」
「…すみません。もしかして有名なんですか」
「まぁ、公式に呼ばれるくらいには」
「ええ!?」
意味が分かって驚いてる、ってことはニコ動は見てるのか。
「ゲーム実況って見たことある?」
「毎日見てますよ! 大好きです」
「すぽおおおおおおん!」
「!?」
「おいきっくんびっくりするだろ」
「実は俺たち
ジリリリリリッ
「…タイミング悪いなあ」
まあでも俺たちがゲーム実況やってるって●が知ったところで何も変わらないだろうし、別にいいか。
●のこと、青森に住んでるってことしか知れなかった。
でも毎日会えるんだ。
また今度聞けばいいか。
さあ、今日も仕事だ。