深紅夢物語

□執事歓迎会
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「グレルー!!」

「はいぃっ〜! 只今〜!」

2階に居るマダムの声が聞こえると1階にいたグレルは声を上げた

そんなグレルの姿を見て近くにいた使用人が不思議そうにグレルに訊ねる

「あの、グレルさん」

「はい 何でしょう?」

「今、奥様に呼ばれたんですか?」

「はい」

不思議に訊いてくる使用人にグレルも不思議そうに返事をした

「よく聞こえますね ここまで…」

「あ、えーっと 私耳が良いんですよ アハハ…」

笑って誤魔化すグレル

「へ〜」

「で、では失礼します」

使用人に一礼して慌ただしくその場を去り、マダムの元へと向かう

「ふぅ… 危ないワネ 人間の聴力がどんなものかわからないからこういうの困るワ…」

長い廊下を歩きながら呟く

―コンコン

「どーぞ」

「失礼致します お呼びでしょうか奥様?」

「えぇ ちょっと頼みたいことがあってね」

「何でしょう?」

「此処から3つ離れた街に紅茶を買いに行って欲しいんだけどいいかしら?」

「はい 勿論です」

即答する執事グレル

するとマダムは死神のグレルを見る目に変わった

「夕方には帰って来れる?」

グレルはマダムの表情に気付いて口角を上げた

「ンフッ 昼過ぎには帰って来れるワ」

「ふふっ 流石ね… でもゆっくり行って来ていいから」

「そう?」

「うん バーネット邸の執事って伝えれば分かるようになってるから」

「わかったワ じゃ行ってくる なるべく早く帰るワ」

「あぁ…うん 行ってらっしゃい」

―ガチャ



「ふぅ…」

グレルが出て行くとマダムは息を吐き、1階へ向かった





「はいっ! というわけでグレルの歓迎会を開くわよ!!」

マダムは使用人を集めて叫ぶと使用人から肯定の返事やら拍手やらが贈られた

マダムは使用人を迎える度に歓迎会パーティーを開いていた

「時間は約4時間! グレルが帰って来るまでに準備を終わらせるわよ!!」

マダムが使用人達に言うと一人の使用人が控えめに聞く

「あの奥様?」

「何?」

「グレルさんはあそこの紅茶を買いに行ったんですよね?」

「そうよ?」

「でしたら夜にならないと帰って来れないんじゃないですか?」

歓迎会の主役は決まってマダムが遠くまで使いに行かせ、その間に準備を進めるといった作戦だった

しかし、行き先の割りには時間が短過ぎると思っている使用人がほとんどだ

「あ、あぁ… あの子 あぁ見えて足は速いのよ〜」

マダムは笑って誤魔化すが使用人は それでも… といった顔をしてお互いに確認をし始めた
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