死神短編物語

□雨宿り
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ザァァァァァァァァ・・・

凍て付く寒さに呼応するように冷たく激しい雨が降っていた

「こんな天気じゃもう店じまいだね〜」

アンダーテイカーがカウンター席から腰を上げると時計の短針は六時をさしていた
奥の部屋へ行こうとした瞬間、何の前触れも無くドアが開け放たれた

「ハァ〜イ」

「グレル!?」

見るとそこには全身びしょぬれのグレルが立っていた

「あぁ〜ん 会いたかったワ〜」

そう言いアンダーティーカーに抱きつこうとするグレル

「どうして君が!?」

自分が濡れるともきにせずグレルを抱きとめるとグレルに尋ねる

「最近忙しくてなかなか会いに来れなかったんだけど今日はもう終わったから会いにきたの〜 にしてもウィルったらほんとに死神使いが荒いんだから! なんでこんな日まで仕事なんてやらなきゃいけないのヨ!」

プリプリ怒っているグレルをみるとアンダーティカーは自然と頬が緩んだ

「ヒッヒッヒッ・・・ 大変だったんだね〜 こんなに冷たくなって…」

グレルの頬に手をあてるアンダーティカー

「アラ 珍しく貴方の手が温かく感じるワ」

「君が冷たすぎるんだよ さぁ早くお風呂にお入り?」

「アラ いいの?」

「ヒッヒッヒッ・・・ 最初からそのつもりだったんだろ〜?」

「まぁねん じゃ頂くワ〜」

そう言うとグレルは奥へ消えてった



「ふぅ いいお湯だったワ〜」

風呂から上がると着替えがなかったグレルはアンダーティカーが貸してくれたYシャツとズボンといった格好をしていた

「やぁ 温まったかい?」

暖炉がある部屋に行くとアンダティカーがグレルが着てきたコートなどを干してくれていた

「えぇ 心も体もポッカポッカDEATH★」

「ご飯も出来てるよ〜」

「ホントっ!? じゃあ一緒に食べましょ?」

「ヒッヒ・・・ そうしようか」



カチャ…

不意にグレルがフォークを置いた

「ん…? もういいのかい?」

グレルの皿には三分の二くらいの料理が残っていた

「んん… お腹は空いてるんだけど…」

(ひょっとして…)

アンダーティカーは席を立ち、グレルの横に立つと片手をグレルの首に回し、引き寄せた

「………!! えっ ちょっ!!」

グレルは驚きのあまり身を引こうとしたが、アンダーティカーが回している手がそれを許さなかった

コツン… とお互いの額が触れた

「やっぱり… 熱が出てきてるよ」

アンダーティカーとの距離が近すぎて意識が飛んでいきそうだったグレルだったが、その言葉で我に返った

「…えっ!?」

「雨で身体を冷やしたせいだね〜」

「アタシ風邪とかめったに引かないんだケド…」

「とりあえず 片付けてくるから少し待ってておくれ〜」

そう言って食器を持って部屋を出て行くアンダーティカー

「あっ 待ってアタシも手伝うワ!」

流石に世話をかけてばかりは気が引けたので、残りの食器を持って行こうと歩き出した―

しかしいきなり眩暈に襲われた―

ガッシャーン!! ―ドサッ

「グレルっ!?」

その音に気付いたアンダティーカーは慌てて戻って来ると倒れたグレルを見つけ、抱き起こした

「グレル! しっかりおしっ!?」

呼びかけたがグレルの反応はなかった

「待ってておくれとい言ったのに… しょうがない子だねぇ…」

そのまま軽々とグレルと抱えあげると寝室へ向かった



「ん…」

しばらくするとグレルが目を覚ました

「あれ… アタシ…」

「やぁ 目が覚めたかい?」

声のする方を見るとアンダーティカーが自分の隣で椅子に座っていた
その角度で自分がベッドに寝ていることに気付き、起き上がろうとする

「あぁ ダメだよ 寝てなきゃ」

「アタシなんで…」

「覚えてないかい? 君食事の後倒れたんだよ?」

「あっ…」

「思い出したかい?」

「ゴ、ゴメンナサイ・・・ 食器割っちゃって…」

しゅんと謝るグレルにアンダーティカーは…

「そんなことはどうだっていいさぁ〜 それよりも小生は『待ってておくれ』と言ったはずだよね〜?」

そういうアンダーティカーの表情は怒っているように見えた

「う… ゴメンナサイ・・・」

「まったく… 君が倒れているところをみたら寿命が百年縮んだよ〜」

気が付くといつもの顔に戻っていた

「心配してくれたの…?」

「当たり前だろう? さぁ、もうおやすみ?」

「えぇ そうす― ごほっ ごほっ!!」

再び寝ようとしたら咳き込んでしまった

「大丈夫かい!?」

「だ、大丈夫ヨ… 少し寒気がするだけだから…」

するとアンダーティカーはコートと帽子を脱ぐとグレルのベッドの中に入ってきた

「こうすれば温かいだろう?」

「…! えぇ… 温かいワ」

「………アンダーティカー?」

「なんだい?」

「愛してるワ…」

「………! ヒッヒッヒッ・・・」

こうして二人は静かに眠りについた…


→あとがき
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