葬儀屋夢物語

□すれ違う心
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「アンダーテイカー、死神って本当なの?」

ススカが悲しみに満ちた顔で聞く

「うっ、そ、それは…」

「本当なんだね…」

「…………」

「人間の私と死神の貴方が一緒にいることなんて始めから無理だったんだね…」

「…ススカ!」

「さよなら… アンダーテイカー…」

「ススカ! 待っておくれ!」

アンダーテイカーは手を伸ばすが、どんどんススカとの距離は広がっていく…

その手は届かない―





「―!!」

朝、アンダーテイカーは冬の終わりだというのに汗をかいて飛び起きた

「…夢?」

はぁ はぁ と息を整えた後、やっとといった感じで口から出た言葉は小さく震えていた

辺りを見回した後、アンダーテイカーは思いっきり息を吐く

「はぁ〜〜〜 寿命が300年位縮んだよ〜」

汗を拭いながら言うとアンダーテイカーは帽子を被り、コートを着てススカの居るキッチンへ向かった





「おはよう! アンダーテイカー!!」

起きていたアンダーテイカーに笑顔を向けて挨拶をするとアンダーテイカーはほっとしたような気持ちになった

「あぁ おはよう、ススカ…」

「…?」

少し元気のないようなアンダーテイカーの姿にススカは首を傾げた

「どうしたの? アンダーテイカー」

「へ!? 何がだい?」

「何か疲れたような顔してるから… 眠れなかった?」

「いや、何でもないよ…」

「…? ならいいんだけど ちょっと待っててね もうすぐ出来るから」

「あぁ…」

アンダーテイカーは調理をしているススカの背中を眺めながらモンモンと考える

「(小生が死神だってこと… 言った方がいいのかねぇ〜 でも、もし言って今朝の夢が正夢に……… あ゛あ゛〜 こんなことなら二人で住むことになったときに言っておけば良かった〜!!!)」

アンダーテイカーは髪をクシャクシャにしながらそんなことを考えているとススカが料理を運んで来た

「はい …どうしたの? さっきから」

「ん!?」

いつの間にかススカが目の前にいることに気付いてアンダーテイカーは驚いた

「今日のアンダーテイカー、おかしいよ? やっぱり何かあった?」

心配そうに覗き込んでくるススカにアンダーテイカーはたまらず勢いでススカの肩に手を置いて口を開いた

「ススカっ!!」

「な、何?」

急に肩を掴まれたのでススカは驚いて目の前のアンダーテイカーを見るとアンダーテイカーは言葉を絞り出すように言葉を言う

「じ、実は…」

「? …『実は』?」

少しの間を空けるアンダーテイカーにススカは ん? となる

「実はっ 実は…」

「…………」

そしてアンダーテイカーは少し震えていた身体を抑え、口をゆっくり開いた

「実はっ…! トマトはミニの方が栄養があるんだよ?」

暫しの沈黙が生まれる

「え?」

ススカは真面目な顔で真面目な声でそう言ったアンダーテイカーにキョトンとなる

「(違う!! そーじゃなくて!!!)」

キョトンとなっているススカの目の前でアンダーテイカーは心の中で叫んだ

「(トマトの栄養価の違い何てどうでもいいんだよっ!!)」

アンダーテイカーの表情が見えないのでススカはアンダーテイカーの考えていることが分からずにふと自分の運んできた料理を見た

「そうなんだ ごめんねアンダーテイカー、明日からはミニトマト買ってくるね」

「え?」

アンダーテイカーがススカの目線を追うと今日の朝ご飯であるサラダにトマトが使われていることに気づく

「はあぁぁぁ…」

脱力感に襲われる

「本当にどうしたの? また風邪引いた?」

ススカは机に両腕を置き沈んだアンダーテイカーを心配そうに覗き込む

「いいや… 大丈夫だよ 食べようか?」

「?? うん」

二人は椅子に座り朝ご飯を食べ始める

暫くするとアンダーテイカーがおもむろに口を開いた

「あの ススカ?」

「何?」

「もし小生が人間じゃないって言ったらススカはどうする?」

「…え? えーっと…」

質問の意味を理解する為ススカは暫く考えた

「…………」

そんなススカをアンダーテイカーは真面目そうな顔で見つめている

「…つまりアンダーテイカーが宇宙人とか悪魔とかだったら、私はどうするってこと?」

「…あ、あぁ(まさか害獣を例えにされるとは…)」

「うーん 別に変わらないんじゃないかしら?」

「…へ?」

予想外の答えが返ってきてアンダーテイカーは間の抜けた声を出す

「だってそうだったとしても、私はどうすればいいの? 此処を出て行っても行くところなんてないし…」
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