葬儀屋夢物語

□差し出された手…
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「やれやれ すっかり遅くなってしまったよ〜」



アンダーテイカーはこの日、遅くまで“お客さん”の相手をしていた



(少し風に当たろうかねぇ〜)



そう思いアンダーテイカーは夜の外へと出て行った



30分位歩いただろうか気がつくと人気のない道を歩いていた



すると後ろから此方に走ってくる足音が聞こえた



「はっ はっ はっ…」



振り返ると暗くてよくわからないがだんだんと息切れしたような声が聞こえてくる



その人物は後ろを気にしているようで、アンダーテイカーに気付かずぶつかってしまった



「っ…!」



「おやぁ…?君…」



「えっ?」



聞き覚えのある声にその人物は顔をはっとあげた



「ヒッヒ… また会ったね〜」



アンダーテイカーにぶつかって来たのは葬式の時の少女であった



「ごめんなさい! 私、急いでるので―」



再び走り出そうとした少女の腕をアンダーテイカーは掴んだ



「お待ち」



「離して!あいつら―「待てゴルァ!!」



少女と男の声が重なった



「やっと追いついたぜ…」



三人の男が闇の中から姿を現した



「おや?」



「てっ、てめぇ!!」



男とアンダーテイカーはお互い姿を確認するとそれぞれ反応する



「君達… まだこんないたいけな少女を追いかけ回していたのかい?」



「うるせー!! その女をこっちに渡せ」



アンダーテイカーはニヤッと口角を上げると言った



「“渡さない”と言ったら?」



「はん、今回はこの間のようにはいかねぇぞ」



男は余裕顔で懐に手を入れると拳銃を取り出した



「…!!!!」



少女は絶句し震え出す



そんな少女と男達を見てアンダーテイカーは…



「やれやれ… そんな物を見せたからこの子が怯えてしまったじゃないか」



「余裕ぶってるのも今のうちだ… さぁその女を渡せ!!」



銃口をアンダーテイカーに向ける男達



「『渡さない』」



ダァン!! ダァン!! ダァン!!



男達が一気に発泡した



少女はその場に固まる



「あ… あぁ…」



声にならない声を出すと、男達は勝ち誇った顔をした―
しかし―



「ヒッヒッヒ…」



「「!?」」



少女と男達は驚く



アンダーテイカーは片手の人差し指、中指、薬指、小指で3つの弾丸を受け止めていた



「さぁ もう分かっただろ? 小生は死神だから人の生には関われないのさぁ〜 早く去らないと…」



バキッ っと言う音が聞こえるとアンダーテイカーが指に挟んでいた弾丸が粉々に粉砕された



それを見て男達は



「ば、化け物〜!!」



一気に駆け出した



「全く…“化け物”とは酷いね〜」



少女に振り返る



「大丈夫だったかい?」



コクリと頷く



「そういえば君の名前をまだ聞いてなかったねぇ〜」



「…ススカ ススカ・ミリュース」



「ススカか… いい名前だねぇ〜」



そう褒めると手を差し出す



「さぁ いつまでこんな所にいたら風邪を引いてしまうよ? 送ってあげるよ」



しかし少女は手をとろうとせず俯いている



「もしかして帰えるところがないのかい?」



その言葉にピクッと反応する



「じゃあ 小生の所に来るかい?」



驚いて顔をあげる



「言ったよね?『何かあったら いつでも店に来な』って」



「…………!!」



「嘘だと思ったかい?」



「いや… あの」



「ん〜?」



「どうして…」



「さぁ〜 どうしてだろうね〜」



「……」



「小生の所に来たら教えてあげようかなぁ〜」



そう言って再び少女に手を差し出すアンダーテイカー



「さぁ?お手をどうぞ お嬢さん」



遠慮がちにその手をとる少女



「さぁ 行こうか」



歩き出すとススカがいきなり片膝を折った



「―っ!!」



「どうしたんだい!?」



アンダーテイカーは驚いてしゃがむとススカが足を押さえてるのに気付き、靴を脱ぐように言いその足を診た



「あぁ 捻ったんだね〜 青くなってるよ ヨイ
ショっと」



そう言うなりススカを抱きかかえるアンダーテイカー



「――/////!!!!!」



ススカはいきなり抱えられてパニックになった



「あっ、あの/////」



「ん〜? なんだ〜い?」



「私、自―「自分で歩けるってのは却下だよ〜?」



「………」



恥ずかしさの余り俯むくとアンダーテイカーはゆっくり歩き出した



しばらくしているとアンダーテイカーの体温と揺れが心地良く、アンダーテイカーに自分の身体を預け眠りについてしまった



「おや? 眠ってしまったようだね〜」



アンダーテイカーはススカの顔を覗く



(こんな顔もするんだねぇ〜)



気持ち良さそうに眠っているススカをみるとアンダーテイカーはフッと笑った



そして二人の影は闇に消えていった―
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