グレル夢物語

□前世の記憶
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ギュララララ… シュルルルル…

「はい、任務完了」

グレルはその日、自分の担当地区で魂の回収をしていた

「はぁーあ 退屈だワ…」

審査を終えるとグレルは高いビルの屋上に立って呟く

「あと二件ネ しかも夜… もぅ!何でこんなに時間が空いてるのヨ!! 今日死ぬなら時間なんて関係ないワ! さっさとくたばっちゃいなさいヨ!!」

グレルがそんな無茶なことを言っているのは3日前からだった

3日前… カーレン病院での仕事を終えてその後調べに行こうと思っていたグレルだが、自分の担当地区の仕事に追われていたのだ

けして仕事の量が多い訳ではない ただ死亡予定時間がバラバラすぎてなかなか遠距離のカーレン病院に向かえないのだ

「はー もうどうでもよくなってきたワ」

投げやりに言うとグレルはデスサイズを取り出し、磨き始めた

「♪〜 ♪♪〜」

磨きあげると太陽にかざす

キラーン

「はぁ〜 いいワ〜 チュッ





「レイリス… 良いのか? このまま奴を捨て置いて…」

「…………」

悪魔界の一室に二つの影があった

「レイリス… まさか奴がお前を探しにあの病院に来ると思ったのか?」

「…………」

「儂は知っているぞ? 死にゆく魂がない日にお前があの病院に行っていることを…」

「私が愚かでした… 私を悪魔界に堕したことは愚か 私の存在まで忘れているなど…」

「そうだ… お前は死ぬ時、あの死神に地獄送り… つまりこの悪魔界に堕されたのだ 何の罪も無いお前を… そしてこの世界に堕されたお前は記憶を無くし、周りの悪魔から毎日のように喰われていた… そんなお前を儂が拾ってやったのを忘れたのか?」

「忘れてません… その恩を返す為に私は今まで死神共を…」

「そうだ… お前はその手で何人もの死神を殺してきた…」

「…………」

そこで男は言葉を区切ると元々低い声を更に下げる

「なのに何故元凶の死神… グレル・サトクリフを殺さない?」

「それは…」

彼女は男から顔を背ける

「(どうして…? あの時… 奴を見た時、憎しみが私の中から消えた… あの死神は私の復讐相手なのに… バーグァ様から聞いた… あの死神が私を悪魔界に堕したことも… その話を聞いてから私は奴に復讐することしか考えてなかったのに… なのに… 何故…)」

「レイリス… 行け、お前の手で全ての死神を根絶やしにするのだ…!!」

「…はい」

―カツカツカツ…

彼女はその部屋から出て行き、その気配が無くなると男― バーグァが呟いた

「洗脳が足りなかったかったか…? まぁいい あいつが使えなくなったらまた別の奴を用意すればいいだけのこと… ククク… 壊れるまで儂の手のひらで踊ってもらうぞ… ククク… ハーハッハッハ!!」

その下品な笑い声は部屋に響いた





「ロナルド・ノックス」

此処は死神派遣協会―

たまたま廊下を歩いていたウィリアムの目にロナルドが映ったので呼び止めた

「? あ、ウィリアム先輩 なんスか?」

ロナルドは振り返って相手を見る

「最近のグレル・サトクリフの様子はどうですか?」

「…? 普通に仕事に行ってるみたいですよ?」

「そうですか… なら良いのですが」

「最近、よくサトクリフ先輩のことを聞いて来ますね どうしたんスか?」
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