中編夢物語

□DEATH THE HERO
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それは静かな夜だった


此処は死神派遣協会


昼間と違い静まり返った館内に死神の姿は無い


と思われた


「んもぅ!どうしてアタシが書類取りに行かなきゃならないのヨ!」


「サトクリフ先輩が忘れたからっスね〜」


「あ゙ぁん!?」


長い長い廊下を歩いている赤とオレンジの死神グレル・サトクリフとロナルド・ノックス


グレルは大層ご立腹の様子で後ろから付いてくる後輩に鬼の形相で振り返った
どうやら二人は一度死神寮へ帰ったらしく、もう一度書類を取りに戻ってきた様子


「先輩、皺が増えますよ」


「―――!やだもぅ!」


グレルはバッと顔を正面に向けて手で顔を揉み解す


「今何時っスか〜?」


「0時30分!全く…、一番お肌を休めなきゃいけない時間なのに!」


「にしても暗いっスね〜、どこ歩いてるのか分んないっス」


「確かにそうネ、月明かりでしか見えないワ」


その時、フッとグレルとロナルドの足元に“穴”が空いた


「え!? きゃぁぁぁ!?」


「うわっ、ちょ!何スかこれぇぇぇ!?」








−同時刻−


「ミカのせいでもうこんなに暗くなってる…」


「何でミーのせいなんですかー 先に喧嘩ふっかけてきたのヤミじゃないですかー」


暗い廊下を歩く二つの影


ミカは研修の為グレルに付いている死神


ヤミは管理課に所属している死神


そして二名の想い人… ならぬ想い神は同じ赤い死神―


「何でこんな腹の黒いのがグレル先輩に付いてるんだろ…」


「誰の何が黒い、ですかー その理由はミーとグレル先輩がそういう運命にあるからですよー」


少し勝ち誇った顔で言うミカ


「…………」


二人は定時頃、ばったり会ってしまい、口喧嘩をしていたらこんな時間になってしまったのだ


「にしても暗いですねー ヤミの心の中みたいですー」


「何ですって?私が病んでるみたいに言わないでくれない…?」


「実際病んでるから良いじゃないですかー」


「腹黒性悪女…」


ピキンッ


「何か言いましたー?」


「…何か聞こえたの?」


「「…………」」


バチバチッと二人が火花を散らせていると二人の足元に大きな“穴”が出来た


「「―――っ!?」」


いきなり足元が無くなった二人はそのままなす術無く落ちて行く








−同時刻−


「全く…、何故定時前に言わないのか…」


「本当ねー こんな時間に呼び出すなんて…」


「何の用でしょうか…?」


廊下を歩く三つの影


ウィリアム・T・スピアーズ
マリー・トルマリン
ティーナ・レビット


三名は同じ部屋で残業をしていて、つい先程帰ろうとした時、
お上から呼び出され来た道を引き返していた


マリーはウィリアムの同僚死神
ティーナはウィリアムの後輩にあたる死神


共に管理課所属の女性死神だ


「しかし、我々三名とも呼び戻すなど…」


「報告書に不備でもあったのかしら?」


「…えっ!? じ、じゃあ…私の…せいかも」


マリーが言った言葉にティーナは不安げな表情を浮かべる


それを見たマリーは直ぐにフォローする


「あぁ、別にそんなつもりで言ったんじゃなくて…、大丈夫よ
私達、貴方の報告書ちゃんとチェックしたんだし
きっと別のことだろうから」


「だと…良いんですけど」


「―ん?」


その時、ウィリアムが足を止めた


「どうしたの?ウィリア―」


マリーも“それ”に気付いた


「マリー・トルマリン、ティーナ・レビット!跳びなさい!」


「―――っえ!?」


ウィリアムとマリーは反射的に避けることが出来たが
ティーナは足元に空いた“穴”に落ちてしまった


タンッ と地面に足を着けたマリーがウィリアムに聞く


「どうする、ウィリアム!?」


「…仕方ありません、行きますよ、マリー・トルマリン」


「そー 来なくっちゃ!」


ウィリアムとマリーはその大きな“穴”に自ら飛び込んだ








その“穴”に落ちた七つの影
ヒューーー と落ちる感覚に襲われ、出口に放り出された


「ったーーい!何なのヨ!?」


「落ちたんスか!?」


「…ヤミ、退いてくれない?」


「何処…此処?」


「いたた…」


「「「「…ん?」」」」


落ちた者達は同時に顔を見合わせた


「あ、グレル先輩」


「何であんた達が!?」


「もしかして俺らと同じで穴に落ちたんスか?」


「はい、私は…」


「此処…何処ヨ?」


グレルが辺りを見回すとそこは真っ昼間、旅人のような格好をした人々が目に入った


グレルの疑問に答えるように上から声が聞こえてくる


「此処はダンジョンです」


「その声 ウィ―」


ドシャ とグレルの顔面にウィリアムが降って来た


続いてマリーも地面に着地する


「落ちたのはティーナだけじゃなかったのね」


此処にいるメンバー
ロナルド、グレル、ミカ、ヤミ、ティーナ、ウィリアムを見るマリー


「ってウィル、“ダンジョン”って何ヨ?」


「ダンジョンとは死神派遣協会の秘境に存在する新神死神用に作られた試験場…
みたいな物です、此処ではチームワーク、デスサイズの扱い方、敵の倒し方、
危機適応力を磨く事が出来ます」


「へー でも俺聞いたことないっスよ?」


「それはそうよ」


「え?何でっスか、トルマリン先輩」


「此処はもう半世紀前から使用を禁止された…
闇に葬られた“死の迷宮”なの」


『……えぇぇぇぇ!!?』


「うるさいですよ」


「そ、そんな恐ろしい迷宮に今どうしてミー達がいるんですかー?」


「空間に異常が起こった可能性があります」


「もしかして俺達が上に取りに行くよう言われた書類ってそれのことなんじゃ…」


「そうかも知れないワネ、ウィル、戻る方法あるの?」


「残念ながら攻略するしかありません」


「まじっスか…」


「攻略出来なかったら私達…
ふっ… ふふふ…」


「ちょっとヤミ、不吉なこと言わないでくれませんかー?」


「…?あの、サトクリフ先輩、上に何かついてますよ?」


ティーナがグレルの頭上に指を差すとグレルはハテナ顔で自分の上を見た


「な、何コレーー!?」


こう書かれていた


グレル・サトクリフ ▼
死神 level.1


「あ、ミー達もですー」


ミカ ▼
死神 level.1


ヤミ ▼
死神 level.1


ロナルド・ノックス ▼
死神 level.1


マリー・トルマリン ▼
死神 level.1


ティーナ・レビット ▼
死神 level.1


ウィリアム・T・スピアーズ ▼
死神 level.1


「“▼”を押したらどうなるんですかー?」


カチッ


【ミカ】
攻撃 3 体力3
防御 2 腹黒さ 10
スピード 3


「腹黒さ10って何ですかー!?」


「ふふ… 腹黒っとことだよ…」


カチッ


【ヤミ】
攻撃 4 体力 2
防御 1 ヤミ 100
スピード 1


「…………」


「ふ、ヤミ100だってー どんだけ闇なんですかー」


「じゃあ俺のは…」


カチッ


【ロナルド・ノックス】
攻撃 5 体力 4
防御 5 恋愛力 10
スピード 4


「喜んで良いんスかね…」


「じゃあアタシは!?」


カチッ


【グレル・サトクリフ】
攻撃 10 体力11
防御 9 グズさ 10
スピード 9 変態さ 90


「変態さ90って何ヨ!?失礼しちゃうワ!!」


「遊んでないで行きますよ」


「行くって何処に?」


「まず集会場へ行って【地図】を貰います」


「…………」


グレルはウィリアムの上の▼を押してみた


「えい!」


カチッ


【ウィリアム・T・スピアーズ】
攻撃 12 防御 12
冷徹さ 10 攻撃 12
グレルに対する好意 −∞


ズーーーン…


「…?グレル・サトクリフ、どうかしましたか?」


「い、いえ… 見なきゃ良かった… ぐすん」





【集会場】


「すみません、【地図】を貰えますか?」


ウィリアム達は初心者受付のところにいた銀髪の男性に話し掛ける


「…いらっしゃい、【地図】かちょっと待ってくれ
おい、チナツ」


「はーーい!」


その男性が呼ぶと奥から少女が出て来た


「いらっしゃいませ!私の造ったダンジョンへようこそ!【地図】ですね、少々お待ちを…」


「チョット、待って」


グレルは聞き捨てならない言葉が聞こえて『待て』のポーズを取った


「何ですか?」


「今、あんたが造ったって言った?」


「はい、そうですよ!此処は今の時間で言うと半世紀前に私が造ったダンジョンです!
私達の意識はコンピューター技術によって――」


「じゃああんたをボコればこのふざけた迷宮から出られるってことネ」


チナツの説明中にグレルが挑発気味に言う
一方チナツは微かな殺気にニッコリ笑いながら剣を取り出した


「私と… 勝負なさるおつもりですか?」


「手っ取り早いワ!!」




一分後


「おいお前、生きてるか?」


銀髪の男性がボコボコに返り討ちに遭ったグレルに話し掛ける


「…………」


【返事がないただの屍のようだ】


「私に勝てると思ったんですかね〜 ね、先輩


「…最初にこれを見せれば良かったな」


銀髪の男性はチナツの▼を押した
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