別世界夢物語

□光と影
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カタカタカタッ…
パチンッ!



クルルズラボに甲高く音が鳴るとそれ以降キーボードを叩く音が止んだ




「あぁ〜 漸く一段落ついたぜぇ〜」




クルルは手を組み上へと伸ばした




ん〜 と声を出しながら伸びをする




「結局徹夜しちまったみてーだな」




クルルはパソコンに表示されている時間を見て呟いた




「…………」




ぼーっと生気が抜けたように青白いパソコン画面を眼鏡に映すクルル




「…流石に疲れたぜぇ
栄養剤飲んで暫く寝るか…」




時刻は午後三時だった




腰を浮かせようとしたクルルだったが疲労が溜まっている為、暫く動けそうになかった




そんな時、ラボの開いた音がし、直ぐにケロロの声が近付いてくる




「クルル曹長ー!
いるでありますかー?」




「おー 居るぜ隊長〜
どうしたい?」




ケロロは直ぐに要件を言う




「モア殿を見なかったでありますか?」




「い〜や、此処には来てないぜぇ」




「そうでありますか…
わかったであります
他のところを探すであります」




「あぁ〜」




立ち去るケロロにクルルはヒラヒラと手を振った




「……ふぅ」






―――


――――――



――――――――――



数分後クルルは意識を手放して静かに寝息を立てていた



「Zzz…」



そんなクルルにそ〜っと近付く一つの影




「…………」




クルルが寝ていることに気がついた彼女は助手席に置いてある膝掛けに手を伸ばし、クルルにかけた





フサッ…




「…………ん?」




自分に掛かったその感覚にクルルの意識は浮上してくる




「あっ、起こしてしまいましたか?」




クルルのぼやけた視界にモアが映る




いつもなら驚いて距離をあけるクルルだが、疲労からそんな気力もなく気怠げに短く問う




「……何か用か?」




モアはニッコリ笑って持っていたコンビニ袋と手作りのおにぎりをデスクの上に置く




「いつものドリンクとおにぎり置いておきますね、クルルさん」




「…誰も頼んじゃいねーよ」




ぶっきらぼうに言うがモアはクルルを心配するように言う




「栄養ドリンクばかりでは身体に悪いですよ?
食べれる時はきちんと食べた方が良いです
てゆーか健康第一?」



「…………」



クルルは次に自分に掛かっているモアの私物である膝掛けに目をやった




「私ので良ければ使って下さい」




「…こんなもん要らねーよ」




膝掛けを取ろうとするクルルにモアは言う




「駄目ですよ、身体を冷やしたら風邪を引いてしまいます」




「ケロン人はアンゴル族との身体の作りがちげーんだよ」




「でも…」




眉を下げて口ごもるモアにクルルは小さく舌打ちした




「しゃーねーな、借りとおいてやるよ」




「…はいっ!」




「キキッ 物好きな奴だな…」




クルルは面白そうに笑った
モアは ふふ と声を漏らして笑う




「…何だよ」




「いえ、珍しいなと思って
クルルさんが私にこんなに話して下さるのは初めてな気がして… とても嬉しいです」




輝く笑顔でサラッと恥ずかしげもなく言うモアにクルルは身を引いて顔に動揺の色が現れる




「なっ… き、気紛れだ
大体お前が…」




「はい、気紛れでも嬉しいです」




「…………ッ!!」




クルルはだんだん落ち着かなくなってきた




「クルルさん?」




クルルの様子にズイッと顔の距離を詰めたモアにクルルは慌てて口を切った




「そ、そう言えば隊長が探してたぜ 早く行けよ」




「おじさまが? キッチンにいたので気付きませんでした…
ありがとうございますクルルさん、行って来ますね」




「俺は隊長に頼まれたから伝えただけだ!」




「分かってますよ、ありがとうございます」




「は、早く行けよ!」




「はい、おにぎり食べて下さいね」




モアはそう言い残しクルルの前から姿を消した






「…ったく、調子が狂うぜ」




クルルの眠けはいつの間にか覚めていた




「……」




クルルは一つおにぎりを手を取り一口かじり、ドリンク瓶を口に付けた




「キキッ 本当に物好きな奴だな… 栄養ドリンクじゃなくてボルシチじゃねーか…」












*2015/04/10*

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