別世界夢物語
□限界点を超えて
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泥門は投手の腕を折られながらも激戦を繰り広げ、勝利を納めた
会場の熱がまだ冷めない中、腕を峨王力哉に折られた蛭魔の意識は闇の中を浮遊していた
「(畜生… 腕も、脚も
言う事聞きやがらねぇ…
動け、糞脚!)」
小刻みに震える脚を睨み付ける蛭魔
勝利を納め生まれた安堵感、折れた右腕で放った無理矢理のロングパスの激痛で意識もいつ飛ぶか自分でも分からない
一筋の汗が地面に染み込む
大量にかいた汗は試合での疲労感を現れているだけではない
相手チームへのハッタリの為に痛みに顔を歪ませそうになったのも耐え、右腕で無理矢理にプレーをした時にかいたものだったりする
そんな張り詰めた状況から解放された今、蛭魔を動かす物は何もなくなった
「チッ…」
小さく舌打ちする
それは武蔵に聞こえていた
「(蛭魔…?)」
武蔵は蛭魔の様子に疑問を持つ
蛭魔の眼差しは遠くにある
もう蛭魔の身体は限界だと悟った武蔵が蛭魔に駆け寄ろうとした時、蛭魔の身体がグラリと崩れそうになった
「蛭――」
「蛭魔君!」
「―――!!」
武蔵の言葉を遮ってベンチから姉崎まもりの声がした
蛭魔の耳にその声が届いた瞬間、ビタッ!! と前足を出し踏ん張った
武蔵は脚を止め、まもりに任せることにする
「蛭魔君、もう試合終わったんだから救護室に戻った方が良いわよ!」
その言い方からどうやらまもりは蛭魔の意識が無くなりかけた事に気付いた訳ではなく、またまたタイミングが合致したようだった
しかしそのまもりの声で蛭魔の身体は自尊心― プライドを震えたたせ意識を戻すことが出来た
まもりは蛭魔の身体を気遣うように手を伸ばすが、あしらわれてしまった
「ケケケケ… 断る、他にやることがあるからなぁ…」
「何言ってるの!?
そんな身体で他にやることなんてある筈ないじゃない!」
「うるせぇ糞マネ、従順に働く約束だろうが」
「なっ、あれは反則よ!」
「おい! 糞ガキ共、集まれ!!」
蛭魔はまもりを無視して集合をかける
「ちょっとー!」
と言うまもりの叫び声もスルーした