別世界夢物語
□犬の名前
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とある戸魂界の朝
恋次は十二番隊を訪れた
書類を手に持ち、大きな足音を立てて廊下を歩く
その顔は普段よりもしかめている
どうやら気が進まない様子
「おはようございます! 阿散井副隊長!!」
「おぅ」
頭を45度に下げる平隊員に恋次は短く挨拶を返す
その大きな足音はある扉の前で止まった
「………はぁ、何で俺が…」
大きく溜め息を吐いて恋次は赤い髪をボリボリとかく
やがて決心は決まらなかったが、このままではしょうがないと恋次は目の前の扉にやや大きめにノックをする
ドンドンッ
「おはようございます!
六番隊副隊長、阿散井恋次です
書類をお持ちしました!」
無駄に大きな声で扉の向こう側に居る人物に自分が来たことを伝える
しーん…
返事はなかった
恋次はもう一度ノックをする
ドンドンッ!
「おはようございます!!
六番隊副隊ち――― 」
そこまで言った時だった、いきなりその扉が開け放たれ、恋次は鼻先を思いっきりぶつけた
何が起きたのか理解しようとした時、怒鳴り声が浴びせられる
「五月蝿いヨ!!」
中から目を血走らせた十二番隊隊長、マユリが現れる
「す…すみませんス…」
恋次は鼻血を出しながら謝る
「全く、こっちは徹夜で怪し… いや、大事な実験をしてるのに邪魔するんじゃないヨ!!」
ん? 今怪しい実験 って言おうとしなかったか?
と心で思いながら恋次は手に持っている書類を差し出す
「こ、これ、隊長に持って行くよう言われた書類っス…」
まだダメージが残っているのか、恋次は鼻を抑えながら言う
「…ネム」
マユリはその書類を一瞥してから後ろに控えている副官に声をかける
お前が受け取れ、と言うことだろう
「はい」
ネムは恋次から書類を受け取ると奥へと消えた
「あ、じゃあ自分はこれで失礼します」
恋次は一刻も早く帰りたい とマユリに一礼して身を翻す
「今度同じことをやったら薬品漬けにするヨ」
「き、肝に命じときますっ!」
恋次は出来るだけ早歩きで十二番隊を去る
「もう絶対行かねーからな〜!」
誰に言っているのか、恋次はそう呟きながら六番隊へ帰る