エリアラ-2
□【星の瞬く聖なる夜へ】
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12月23日
「ッッくしゅん!!」
午前の仕事も一区切りついたランチタイム。職員で賑わう食堂の一画で俺とアランは昼食を摂っていた、のだが…。
「どうしたアラン。風邪か?」
先まで普通だった顔色が、いつの間にか火照ったかのような赤みを帯びていた。
「んー…、なんか、頭ボーッとする…。」
先日、何だかんだでかなりの時間を夜の屋外で過ごしていた俺達。
「おいおい、熱あんじゃねーか!」
咄嗟に触れた額は熱く、俺を見上げる眼も虚ろで焦点が合ってないような感じだった。
なのにアランは鈍感なのか認めようとせず、挙げ句の果てには
「気のせいだって、休憩時間終わりそうだから回収課戻るね。」
なんて言い出したもんだから、俺は慌ててアランを席に押し戻した。
只でさえアランの身体は死の棘に蝕まれて弱っているというのに、加えて発熱だなんて。
「頼むから医務室行ってくれ。」
押し問答の末、やっと承諾を貰えたのは10分後だった。
普段ならこの意地っ張りな所も可愛いんだろうが、今は別。
付き添って医務室へ行くと、肝心の勤務医は不在だった。
「ほら、上着脱いでベッドにあがれよ。」
もたついて中々ボタンが外せないのをみると、熱が上がったか?。
「終業まで寝てろ、ウィリアムさんには伝えとくから。」
半ば強引にアランをベッドに押し込み、俺は勤務医を捜すために部屋を出ようとした。
その時、アランときたら思いっきり袖引っ張ったかと思うと、熱に潤んだ眼で「行っちゃう…の?」って…。
ははっ、俺の理性の糸は切れる寸前だ。
無自覚なんだろうが、どうしてコイツはこんなに誘うのが上手いんだか。
でも病人に手ぇ出す訳にはいかないからな。
俺は自分に言い聞かせるように、アランに囁いた。
「さっさと治せ。一緒にクリスマス過ごすんだろ?」
寝入るアランのベッドの脇。
胸ポケットから覗くあの手帳には…
明日はクリスマス・イブだ。
「夜は一緒に…な。」
瞼にそっと口付けをし、俺は回収課へと戻った。
気の早いサンタクロースからは、『my』のメッセージをお前に。